新型コロナウイルスの感染拡大に歯止めがかからない中、夏に開かれる予定の東京五輪・パラリンピックに医療が対応できるのかが、課題に浮上しています。感染症学が専門の国際医療福祉大の松本哲哉教授に話を聞きました。
――松本さんの大学の病院にも、大会運営側から医療従事者を派遣してほしいと依頼があったとか。
去年です。医師を5人ほど派遣してほしいということでした。要請書には具体的な日時と競技会場が書いてあり、そこで必要となった場合の医療対応をお願いします、と。
依頼を受けた時点では、「できれば協力してあげたい」という状況でした。当時、興味があって手をあげた医師もいたかもしれません。
ですが、現時点ではっきり「手伝いに行くよ」と言っている医師はおそらくいないと思います。
――なぜですか。
医療機関には、まずコロナ対応、次にワクチン接種が求められています。五輪の優先順位はどうしても下の方なんです。
例えば、コロナを診ていない先生たちも「五輪の手伝いに行くか、ワクチン接種に協力するか」となれば、ワクチン接種に行くことになります。
大会組織委員会が、日本看護協会に看護師500人の派遣を求めていますね。一番悪いシナリオは、病院側が今は「行かせます」と言っておいて、いざ五輪が始まると「やっぱり感染状況が悪いから行けません」となることです。
本来、きちんとした医療態勢でやるはずだった五輪が、医師や看護師が足りないまま対応せざるをえなくなる恐れがあります。
――どうすれば確実に医療従事者を確保できますか。
保証はないですよね。五輪の…

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