創部相次ぎ29都道府県に拡大へ 女子野球、なぜ盛況

内田快、辻健治
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女子高校野球はいま

 沖縄本島南部の八重瀬町は太平洋に面し、畑があちこちに広がる。

 人口約3万人の町にある県立南部商に今春、沖縄では初めてとなる女子硬式野球部が誕生した。

 部員は2年生が2人、1年生が11人。糸数昌之部長(43)によると、本格的に始動したのは4月10日。オレンジ色のユニホームに身を包み、白球を追った。

スーパーでのバイトから野球に復帰

 県北部の名護市や離島の宮古島から進学してきた部員もいる。「10人集まるかどうかだと思っていた」。糸数部長の心配は杞憂(きゆう)に終わった。

 仲宗根莉麻(2年)は八重瀬町の出身。小学3年から始めた野球には中学卒業で区切りをつけたつもりだった。高校入学後はどの部にも入らず、スーパーでアルバイトをしていた。そこに創部の話が舞い込んだ。

 「めっちゃうれしかった。高校には女子の野球部はないことが当たり前だったので、続けようと考えたこともなかった」

 創部は3月末まで県高校野球連盟の副会長を務めていた仲山久美子・前校長(現八重山商工校長)の発案だ。

 これまでは県内の女子中学生が本格的に野球を続けるには、県外の高校へ進学するしかなく、野球をやめざるを得なかった子どももいた。

 「続けたくても経済的、地理的なものに阻まれてきた。そのハードルを下げたかった」

 昨秋に入部体験会を開くなどして準備を進めた。ユニホームなどの野球用具は地域の住民や企業などの寄付や寄贈でそろった。練習試合は中学生や社会人のクラブチームと行う予定だ。

 女子野球を通して学校の活性化を図る動きもある。

 広島県西部の廿日市市の山間部にある佐伯は、全校生徒が100人に満たない県立校だ。

 生徒数が一定を下回ると統廃合の対象となるおそれがあるため、特例で全国から生徒を募集できる。進学希望者を増やす目的もあって、2015年に誕生したのが、県内では初となる女子部だった。

 18年には新入部員が12人もいた。現部員14人のうち6人は県外からの進学組だ。

 16年度以降、歴代の生徒会長を部員が務め続けるなど、リーダー的な役割も担う。16年から指導する犬塚慧(けい)監督(36)は「野球と勉強を両立させようとする意識が高く、他の生徒にも好影響を与えている」と話す。

 「女子野球タウン」として地域振興をめざしている廿日市市からは下宿費や遠征費の補助を受けている。

減る空白県 活況なぜ

 近年、女子野球の人気は高まり続けている。全日本女子野球連盟によると、16年に約1万5千人だった競技人口は19年に約2万1千人に。

 全国高校女子硬式野球連盟の加盟校、登録選手数も19年の32校、約970人から、2年で40校、約1100人にまで増えた。

 今後の創部予定校を含めると、部は29都道府県に所在し、空白県は減っている。

 活況の背景には年代別のカテゴリーを超えた取り組みがある。

 日本野球機構(NPB)などは13年、小学生の全国大会「NPBガールズトーナメント」を始めた。

 少年野球チームに所属し、出場機会が少ない女子に野球の楽しさを知ってもらうことで、レベルアップや競技人口の拡大を狙った。

 13年は30だった参加チーム数は19年には42になった。中学世代の硬式クラブチームでもいまや女子部は珍しくない。

 全日本女子連盟の山田博子会長は「高校の部の数が増えたことと小学生の全国大会ができたこと。この両方で競技人口が伸びている。相乗効果です」と話す。

 さらに、女子日本代表が13年からプロとアマが協力して進める野球日本代表侍ジャパン」プロジェクトに加わったことやプロ野球の西武と阪神が女子チームを発足させたことも大きかった、とみる。

 「女子でも野球で将来の夢が持てるようになった」

 少子化などの影響で部員数の減少に頭を悩ませる部が多いなか、女子野球は拡大傾向が顕著だ。

 2校だけと狭き門には違いないが、甲子園の土を踏むという夢を持てることにもなった。

 「野球をあきらめて、別の競技をする人もいた中で、大きな目標、モチベーションになる。女子が甲子園で、というのはとても大きな意義がある」と山田会長。

 さらなる追い風となりそうだ。(内田快、辻健治)