「私が田舎暮らしで描く未来」 若い移住者が増える町で

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大滝哲彰

拡大する写真・図版子どもたちに英語を教えるハーモン・愛子・ジョイスさん=2020年11月9日、三重県南伊勢町小方竈

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 三重県南伊勢町小方竈の町立さくら保育園で昨年11月9日、子どもたちが元気よく音楽に合わせて踊ったり、ゲームをしたりしながら英語を学んでいた。町が2019年度から始めた幼児教育「キラキラ教室」の一コマ。教えているのは、ハーモン・愛子・ジョイスさん(25)だ。

 指導中は、ほとんど英語でやりとりする。「やる気があって質問もたくさん。覚えるスピードも速い」。子どもたちと一緒に過ごす時間がとても楽しい。

 父親はアメリカ人、母親が日本人。津市出身で、10歳まで日本で暮らした。その後、渡米し、中西部のネブラスカ州で育った。

 大学では観光学を学び、卒業後にハワイでツアーガイドをしていた。日本人観光客とふれあう機会が多かったが、幼いころにしかいなかった日本の文化をよく知らない。「大人の目で日本を見てみたい」と考えるようになった。

 来日が実現し、19年4月に知り合いの紹介で、外国語指導助手(ALT)として岡山市の4小学校で英語を教え始めた。半年ほどで契約が切れ、フェイスブックで見つけた南伊勢町の地域おこし協力隊に応募し、採用された。そして昨年3月、この町に移住した。

 「思ったよりも田舎」。それが当初、南伊勢町に抱いた印象だった。だが、その田舎での生活が次第に心地よくなってきた。

 車のエンジンがかからなくなったときには、近所の人が助けてくれた。畑で収穫したトマトをおすそ分けしてくれる人もいた。ここに来て、人の温かさを何度も感じた。

 週に1度開かれる大人向けの英会話教室には、20~70代の幅広い年齢層の地元住民らが参加する。「ジョイス」と気さくに名前を呼ばれることがうれしい。

 しばらくは南伊勢町で活動するつもりだ。いずれは外国人向けの観光ガイドにも挑戦してみたいと思う。(大滝哲彰)

人口約1万2千人の三重県南伊勢町。高齢化率が5割を超える町への移住者がここ数年、右肩上がりで増加しています。目立つのは、移住した若者世代の活躍。なぜ南伊勢町を選んだのか。彼らの暮らしぶりや思いを紹介します。

バス釣りを捨て、選んだ「漁業」

 三重県南伊勢町贄浦(にえうら)地区の海域は町内でも屈指の漁場だ。菊田敏希さん(33)は長年勤務した飲食業を辞め、2019年2月、この地で定置網漁の漁師になった。持続可能な漁業を模索する日々が続いている。

拡大する写真・図版定置網漁の漁師になった菊田敏希さん(本人提供)

 中学時代までは名古屋市で暮らした。生まれつき食物アレルギーがあり、米や小麦が食べられなかった。学校では、周りと違うことに劣等感を抱き、1人で過ごす時間が好きになった。そんなときに出会ったのが釣りだった。

 中学卒業後、バックパッカー…

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