映画館を追い込む緊急事態 開けても閉めても「地獄」

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佐藤美鈴、富岡万葉、編集委員・石飛徳樹
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 「なぜ、という思いはある」「文化の灯を消さないで」――。ゴールデンウィーク(GW)を前に、東京と京阪神に出された3度目の緊急事態宣言。コロナ禍で1年以上厳しい状況が続く映画界に、さらなる苦悩を強いている。

 「文化の灯を消さないで。私も飲食業で大変なんですけど、ミニシアターを応援したいという気持ちもあって、きょうは映画を見にきました」。緊急事態宣言が出た翌日の夕方、東京・渋谷のユーロスペースを訪れた女性(40)はこう語った。

 受付カウンターで感染予防の透明なシート越しに劇場スタッフが提示するのは、市松模様の座席表。宣言後、販売席数を半分にするため、前後左右を1席ずつ空ける形で販売している。

 92席ある劇場に足を踏み入れると、その日の観客は13人。それぞれ無言でスクリーンに向き合った。

 上映終了は午後8時ちょうど。本来であればその後にもう1回上映が組まれるところだが、時短営業のためレイトショーはない。鑑賞の余韻も冷めやらぬまま、観客たちは足早に劇場を後にした。

クラスターも報告されていないのに

 東京、大阪、京都、兵庫の4都府県を対象に出された今回の宣言で、1千平方メートル以上の映画館は「休業要請」の対象となった。TOHOシネマズ、松竹マルチプレックスシアターズ、ティ・ジョイ、イオンシネマなど大手シネコンは4月25日から営業を休止。期間は「5月11日まで」「当面の間」などとしている。

 新作の公開では、東宝が宣言前に劇場版「クレヨンしんちゃん」「アーヤと魔女」の延期を決定。さらに宣言が出た後も「くれなずめ」「ヒノマルソウル」「ゴジラvsコング」など延期の発表が相次ぎ、配給や宣伝の担当者たちも対応に追われている。

 4都府県を除いて予定通り公開する作品もあるが、興行収入の3割弱は東京と京阪神地区が占めると言われ、影響は大きい。

 ある劇場スタッフは「昨年に続いて、かき入れ時のGWの休業は痛い。映画館は会話もなく、換気も徹底している。クラスターも報告されていないのに、なぜ、という思いはある」とこぼす。

 映画館の団体である全国興行生活衛生同業組合連合会は、座席数の制限や時短などの対策をとって営業を続けられるよう、政府に陳情書を出していたが認められなかったという。

 興行会社幹部は「感染拡大を…

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