おしゃべりにマスク必要なわけ マイクロ飛沫の生まれ方

有料会員記事新型コロナウイルス

竹野内崇宏
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 新型コロナウイルスはなぜ、無症状の感染者がしゃべるだけで感染が広がるのか。インフルエンザのようにくしゃみやせきで広がるだけでなく、ウイルスを含んだ細かな飛沫(ひまつ)が会話するだけで飛び散るからだと考えられ、対策としてマスクが重要とされている。この飛沫はそもそも、どこでどうやって生まれるのだろうか。

 会食の席でマスクを外して会話を楽しむことが、感染の原因になっている。厚生労働省の職員23人が3月24日に東京・銀座で深夜まで送別会を開き、後に複数の感染者が確認された。参加者はマスクを外したままだったという。送別会の席で、目に見えないほど小さい飛沫が漂い、その中に含まれていたウイルスによって感染した可能性がある。

シャボン玉みたいに、はじけてできる?

 この飛沫はどうやって生じるのか。新型コロナでの研究は途中だが、コロナウイルスの仲間が引き起こす病気の研究で、その仕組みが明らかになっている。2002~03年に猛威をふるったSARS(サーズ)(重症急性呼吸器症候群)だ。

 豪クイーンズランド工科大学の研究者らは、実験参加者に息を止めたり、深く呼吸したりしてもらって観察した成果を09年、呼吸研究の専門誌に報告している(https://doi.org/10.1089/jamp.2008.0720別ウインドウで開きます)。

 報告によると、専門家は「シャボン玉のように体内で泡がはじける仕組み」を推定している。飛沫の発生源となる泡は、口や鼻から吸い込んだ息を肺に届ける「管」の中で発生していると考えられている。

 気管が枝分かれした細気管支(さいきかんし)と呼ばれる細い管が呼吸とともに収縮したり拡張したりする時に、粘膜の表面にできた泡や、管をふさいだ粘液の膜がシャボン玉のようにはじけ、小さな飛沫ができるという。

 感染症に詳しい近畿大学の宮澤正顯(まさあき)教授(ウイルス感染免疫学)によると、こうした仕組みで発生した小さな飛沫による感染は、新型コロナでも起きていると考えられている。

 「普段の呼吸でも、気管支の細い枝には高速で空気が流れ、表面の粘液が波立ったり、泡がはじけたりして小さな飛沫ができる。新型コロナ感染者の粘液にはウイルス粒子が含まれているので、小さな飛沫に乗ってウイルスが体外に運ばれる」

 宮澤さんらは、この小さな粒を「マイクロ飛沫」と呼んでいる。せきやくしゃみで発生する大きな飛沫が直径0・02~0・05ミリほどなのに対し、マイクロ飛沫の直径はおよそ10分の1。軽いため、空気の流れに乗って一定時間空中を漂う。

 こうした飛沫は「エアロゾル」とも呼ばれ、世界保健機関(WHO)は新型コロナについて、大きな飛沫による「飛沫感染」に加え、エアロゾルを吸い込むことによる感染も起きると認めている。

「大声出すほど増える」報告も

 では、なぜ泡がはじけるときに飛沫ができるのか。新型コロナ研究とは別だが、東京都立大学の栗田玲教授(ソフトマター物理学)らが詳しく調べた論文が2月、国際専門誌に掲載された(https://doi.org/10.1039/D0SM02153A別ウインドウで開きます)。

 栗田さんらは、せっけん液のように泡立ちやすくなる液体をつくり、高速度カメラで泡がはじける様子を詳しく調べた。薬品の飛散によるやけど防止などに役立てるのが狙いだ。

 大きさ1~2ミリの泡に、針で突くなどの衝撃を与えて穴を開けると、液体が表面積を小さくしようとする「表面張力」によって、カメラでも捉えられないほど高速で膜が縮む様子が観察できた。縮んだ膜は時々ちぎれながら水滴(飛沫)となった。この水滴が近くの泡を次々に破り、無数の飛沫が飛び散ったという。

 栗田さんは「体液にはたんぱく質などが含まれるため、せっけん液のように泡ができやすくなっていると考えられる。体内でも小さな泡が破裂し、小さな飛沫が生成されている可能性がある」と話す。

 近畿大の宮澤さんら感染症の専門家も、細気管支などで破裂した泡のしぶきが人の吐く息の流れに乗り、体外に出ていることが新型コロナ拡大の一因とみている。

 他にも、大声で話すほど吐き出される小さな飛沫が増えるという米国の研究者らの報告もある(https://doi.org/10.1038/s41598-019-38808-z別ウインドウで開きます)。

 宮澤さんは「声を出せば気管や気管支内の空気が動いたり止まったりを繰り返す。気管支の奥では、振動で水滴を飛ばす超音波加湿器のように飛沫がたくさん出る」と話す。

 会話やせきによって口から出た小さな飛沫がどのように漂って広がるかは、理化学研究所などのチームがスーパーコンピューター「富岳(ふがく)」を用いたシミュレーションで研究している。

■通常の会話でも1分に9千個…

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