「ニコ動」投稿、削除命じる 「差別流布」申し立てで

前田智、武田肇
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 特定の地区を撮影した動画の投稿をめぐり、兵庫県丹波篠山市と地元自治会長が「被差別部落と流布するなど差別的な視点から拡散され、名誉やプライバシーを侵害された」として、動画投稿サイト「ニコニコ動画」の運営会社「ドワンゴ」(東京)に動画の削除を求める仮処分を申し立て、神戸地裁柏原(かいばら)支部が削除を命じる決定を出した。酒井隆明市長が5月31日、明らかにした。2月9日に仮処分決定が出された後、動画は削除されたという。

 市などによると、20分程度の動画で、地区内の公民館や民家、歩行者らが映っていた。「貧民窟のイメージがあるが、どの家も立派な作りである」などの字幕がつけられており、個人名が分かる場面もあったという。

 昨年11月にニコニコ動画に投稿されていたほか、「ユーチューブ」や「ライブドアブログ」でも確認された。そのため、市は地元自治会長とともに昨年10~12月、サイトの運営会社など3社を相手取り、動画の削除を求める仮処分を申し立てた。

 3社は当初、「(憲法が保障する)表現の自由を考えると違法とまでは立証できない」「内容を確認したが任意では削除しない」などと説明した。その後、ドワンゴ以外のサイトでは動画が削除されたため、ドワンゴへの申し立てのみを維持し、審理に時間がかからないよう、申立人も地元自治会長に絞っていた。地裁支部は、申し立てを相当と認め、削除を命じた。

 法務省人権擁護局の担当者は「個別事案についてはコメントできないが、特定の地域を同和地区である、またはあったと指摘する情報を公にすることは人権擁護上許されず、原則として削除対象とすべきだという考えだ」と説明する。

 従来は差別の助長・誘発を目的とする場合に限って削除を要請するとしていたが、2018年末の通知で、目的に関係なく、特定の地域を同和地区であると明示していれば原則、削除を要請することとした。

 一方、法務省の通知は「学術や研究などの正当な目的」とするものは例外としている。最近では動画に「学術」「研究」と明示したり、人権啓発団体を名乗ったりして悪質な動画を投稿する事例が多発しており、人権団体が問題視している。

 法務省人権擁護機関が昨年、インターネット上の人権侵害情報についてプロバイダーなどに削除を要請したのは578件で過去最高だった。

 酒井市長は会見で「動画を見て驚きと怒りを感じた。表現の自由があっても差別は許されない」と述べた。

 部落解放同盟兵庫県連合会の橋本貴美男書記長は、今回、動画が削除されことについて「大きな成果。インターネットでの差別に対する運動の指針になると思う」と話した。

 ドワンゴは今月1日、朝日新聞の取材に文書で回答し、ニコニコ動画への投稿について「表現の内容に対する規制は最小限にとどめつつ、他者の権利を侵害する表現などの違法、不適切な表現は禁止している」と説明。今回の動画の削除については「権利侵害の有無にかかる判断を裁判所に委ね、仮処分の決定後、すみやかに削除した」とした。(前田智、武田肇)