しゃべるだけでマイクロ飛沫、泡がはじけてやってくる?

竹野内崇宏
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 なぜ飲食中にマスクを外して会話したりカラオケで歌ったりすることが新型コロナウイルス感染対策で問題になるのか。ウイルスを含む飛沫(ひまつ)が無症状の感染者から広がるとされるためだが、この飛沫はそもそもどう生じるのか。どう対策すればよいのか。

 厚生労働省の職員23人が3月24日に東京・銀座で深夜まで送別会を開き、後に複数の感染者が出た。参加者はマスクを外したままだったという。室内を漂う、ウイルスを含む細かな飛沫で感染した可能性がある。

 この飛沫はどうやって生じるのか。新型コロナでの研究は途中だが、コロナウイルスの仲間が引き起こすSARS(サーズ)(重症急性呼吸器症候群)研究を通じて仕組みが明らかになっている。

 豪クイーンズランド工科大学の研究者らは、実験参加者に息を止めたり、深く呼吸したりしてもらい観察した成果を2009年、医療の専門誌に報告した。

 専門家が推定したのは「シャボン玉のように泡がはじけて飛沫ができる仕組み」だ。この泡は、吸い込んだ息を肺の奥に届ける「細気管支(さいきかんし)」という細い管の、粘膜の表面に生じる。管が呼吸とともに収縮したり拡張したりする時に泡がはじけ、飛沫ができる。

 感染症に詳しい近畿大学の宮澤正顯(まさあき)教授(ウイルス感染免疫学)によると、新型コロナでも、こうした仕組みでウイルスを含む小さな飛沫が生じ、感染が広がると考えられている。

 この飛沫は「マイクロ飛沫」と呼ばれる。せきやくしゃみで発生する大きな飛沫が直径0・02~0・05ミリほどなのに対し、マイクロ飛沫の直径はおよそ10分の1。軽いため、空気の流れに乗って長く空中を漂う。

 これは「エアロゾル」とも呼ばれ、世界保健機関(WHO)は新型コロナでは大きな飛沫による「飛沫感染」に加え、エアロゾルを吸い込むことによる感染も起きると認めている。

 では、なぜ泡がはじけると飛沫ができるのか。新型コロナ研究とは別だが、東京都立大学の栗田玲教授(ソフトマター物理学)らは、せっけん液のように泡がたちやすい液体を使い泡がはじける様子を調べた。

 大きさ数ミリの泡に、針で突くなどの衝撃を与えて穴を開けると、液体が表面積を小さくしようとする「表面張力」によって、カメラでも捉えられないほど高速で膜が縮む様子が観察できた。縮んだ膜は時々ちぎれながら、丸い水滴(飛沫)となった。この水滴が近くの泡を次々に破り、無数の飛沫が飛び散ったという。

 栗田さんは「体液にはたんぱく質などが含まれるため、せっけん液のように泡ができやすくなっていると考えられる」と話す。

 では、どう対策をとればいいだろう。近大の宮澤さんは「マスクの正しい着用と十分な換気が重要だ」と話す。「肺から出るマイクロ飛沫は小さなアクリル板や『咳エチケット』では防げない。不織布マスクをほおに密着させ、2方向以上の窓や扉を開けて空気の流れを作って、漂う飛沫の濃度を下げることが大切だ」(竹野内崇宏)

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