病気で、震災で逝ったわが子よ 「ひととき」で読む母 

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朝日新聞ポッドキャスト 母の日に読むひととき10選②

 朝日新聞生活面の投稿欄「ひととき」の掲載作から、「母の日に読みたいひととき10選」を担当者が紹介します。後編は、子どもを亡くした母の思いをつづり、大きな反響を呼んだ2編です。引き続き、佐藤啓介記者(東京本社)、松尾由紀記者(大阪本社)とともにお楽しみください。朝日新聞ポッドキャストでお聞きください。

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息子の50回忌に

 1972~73年にかけて、2人の子を白血病で亡くした。2歳だった三男はかわいい盛りにあっという間。小学2年のときから入院していた長男は闘病の末、5年生の4月に力尽きた。治療法が広がった今なら何とかできただろうか。

 しばらくして、長男が病院で落書きに使っていたわら半紙の中から、「台風」という題の詩を見つけた。

 お母さんとはぐれてしまったのかな/お母さんをさがしているんだろうな/ないているようでかわいそうだ/こんどぼくのびょうきがなおったら/いっしょにそとであそぼう/お母さんにめぐりあえるかもしれない/だからそんなに木をゆすったり、たおしたりしないで

 この詩を額に入れて、我が家の宝物にしてきた。

 長男が亡くなった日、病院から解剖の依頼があり、「この病気の子どもたちのために少しでも役に立つなら」と承知した。今では白血病から立ち直る人も増えたが、あのときの解剖が役に立っていると信じたい。

 あれから約50年、私たちが50回忌をしてやれるとは。いまは「一日も早くコロナがおさまりますように」と仏壇に手を合わせる毎日だ。(静岡県松崎町 越後香代子 主婦 86歳)

50年間開けなかったアルバム

Q:このご投稿について、その後、佐藤さんは直接取材されたんですよね。

佐藤:はい、今年の3月に掲載されたのですが、本当に多くの反響をいただきました。この中に出てくる「台風」というお子さんが書かれた詩が読者のかたの印象に残ったようで、こんな優しい心のお子さんがいらっしゃったことを教えていただいて、感謝を伝えたいと。私自身も感謝を伝えたいと思い、実際にコロナの対策を行いながら、静岡の越後さんに会いに行きまして、当時のお話を聞かせていただきました。

Q:詩の実物もごらんになったんですか。

佐藤:はい、本当に小学生の字で、うまくはないんですが、とても丁寧にかかれていました。額に入れて丁寧に残されてきたんですけど、実際にそれを見せていただくと、当時、この子が何を思いながらこの詩を書いたのかが伝わってくるようで、泣きそうになりながら話をお伺いしました。

 50回忌の法事が3月27日にあったそうで、私はそのあとにお会いしたのですが、越後さんご夫妻は、何かすっきりしたというか、穏やかな感じでした。

 しかし、その後、取材でアルバムを見せていただき、はっとさせられました。越後さんご夫妻は、50年間アルバムを開くことができなかったとおっしゃったんです。

 越後さんには3人お子さんが…

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