基地の教師から政治家に いま思う、米国の逆提案がいい

聞き手=国吉美香
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 米軍普天間飛行場沖縄県宜野湾市)の返還合意が動き出すきっかけは、1995年9月に発生した米兵による少女暴行事件です。当時、沖縄県の副知事だった東門美津子さん(78)に聞きました。米軍基地内で日本語教師を20年、基地のまちの市長を8年間務めた経験もある東門さんが語る「動かぬ問題」とは。

 いまだ実現していないものは普天間の全面返還だけではありません。当時から変わっていないことがあります。米軍人・軍属らによって女性たちが受ける性的被害です。

 沖縄では今年1月にも、那覇市内で米兵による強制わいせつ事件がありました。95年9月の少女暴行事件の4カ月前にも、20代の女性が米兵に殴られ殺害される事件が県内で起きています。私には娘が2人いますが、何度も何度も、もし自分の娘だったら……と。考えるだけで頭がおかしくなりそうです。女性が受ける被害については、表面化しないことが多い実態もあります。

 こうした事件が繰り返されるのは、沖縄の過重な基地負担が変わっていないからです。その負担を減らすために25年前、日米が普天間飛行場の返還に合意しましたが、それさえ実現していません。

 先日の日米首脳会談菅義偉首相は「自由、民主主義、人権の普遍的価値を共有する」と語っていましたが、私は怒りを禁じ得ませんでした。辺野古の埋め立ての是非を問う県民投票一つとっても、7割が反対の意思表示をしました。それでも工事を強行している。民主主義や人権はどこにあるのでしょうか。

 私の勝手な解釈ですが、沖縄は本土から離れている。そこでいろんなことが起こっても、本土の人たちには知られないですむ、と日本政府は思っているのではないでしょうか。沖縄では政治も、行政も、基地問題に振り回され続けています。女性や子どもの貧困など、やらないといけない課題がたくさんあるのに。

 いまは、米国側にアプローチしたほうがいいとすら思っています。米国側から日本へ辺野古以外の案を逆提案してもらうために。逆提案なんて笑うかもしれませんけど、私は米国側の総領事や議員とも何度も話をしてきた経験があります。基地内で20年間、米軍家族に向けて日本語を教えてもいましたから、米国に教え子たちもいます。

 米国のシンクタンクの報告書を読んだりしていると、「辺野古じゃなくてもいいんじゃないか」という声が米国側からあがってもおかしくないと感じています。(聞き手=国吉美香)

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 とうもん・みつこ 1942年沖縄生まれ。琉球大卒業後、米オハイオ大大学院に留学。在沖米軍基地内で軍人家族らが通う学校「クバサキ・ハイスクール」に日本語教師として約20年間勤務。94~98年、大田昌秀県政で副知事。2000~05年、沖縄初の女性国会議員として衆院議員。06年には沖縄初の女性市長となり、米軍嘉手納基地の地元で沖縄市長を8年間務めた。