日本脳炎・おたふく風邪ワクチン不足 子どもへの影響は

熊井洋美、市野塊
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 子どもが受ける予防接種のうち、日本脳炎おたふく風邪を予防する2種類のワクチンが、今春から品薄となっている。新型コロナウイルスの流行などとは関係なく、ワクチンをつくる2メーカーの製造工程で不備があったためで、対象年齢の子どもの接種スケジュールに影響が出ている。

 「新規のワクチン予約を停止いたします」

 千葉県佐倉市の「ユーカリが丘アレルギーこどもクリニック」は、ムンプスウイルスにより発症するおたふく風邪予防接種について、ホームページでこう記している。供給停止したメーカーではないワクチンを使っていたが、出荷調整で医薬品卸からの納品がとだえ、窮余の策をとった。日本脳炎ワクチンも納品量が激減し、予約リストをつくって必要な時期に必要な人が接種できるよう管理、入荷のたびにスタッフが対象の家庭に電話連絡をしている。

 「クリニックは、商品のない小売店状態」と嘆く松山剛院長は「千葉県では2015年、日本脳炎にかかった子どもに重い後遺症が残った例がある。おたふく風邪も、かかった後に難聴(事実上の聴力消失)となる子どもがいる。予防接種を希望している人が接種できずに罹患(りかん)した場合、その責任は誰がとるのでしょう。後遺症が残ったら気の毒では済まないものがある」と漏らす。松山さんのクリニックには、ワクチンを求めて市外から突然問い合わせをしてくる保護者もいるが、「普段かかっている医師に相談を」と断らざるをえない状況という。

 「おたふく風邪ワクチン接種予定だったけど……、小児科からキャンセルの電話きた」「昨日小児科に行ったらおたふくより日本脳炎の方がワクチンないって言われた」

 ツイッター上には、保護者とみられる人たちの困惑の声があがっている。

厚労省、未接種者と2回目優先を通知

 おたふく風邪ワクチンは製造する国内2社のうち、武田薬品工業大阪市)の出荷量が今年4月から大きく減った。同社によると、3~4月に山口県の製造工場内で、ワクチンを製造する設備で無菌化に使うエアフィルターに不備が見つかった。製品への影響が見通せないとして、出荷予定のワクチンを廃棄し、在庫は4月末になくなった。出荷再開は10月末になるという。同社は不足量を明らかにしていない。

 日本脳炎ワクチンについては、製造2社のうち阪大微生物病研究会(BIKEN財団、大阪府吹田市)の香川県の工場内で昨年11~12月、原液の製造工程で不純物が生じた。製造を一時中止し、4月以降に供給予定のワクチンがつくれなくなった。出荷再開は12月の見込みだ。2社合わせても例年度より80万回分程度供給が不足するという。

 公費で原則無料で打てる定期接種の日本脳炎ワクチンについて、厚生労働省は1月、都道府県などに対して、未接種者と2回目を優先するよう通知を出した。計4回の接種が必要だが、予防接種室の担当者は「(ウイルスの感染を防ぐ)抗体ができている3、4回目よりも、抗体ができていない1、2回目の方が(病気にかかる)リスクが大きいため」としている。(一部の医療機関が買いだめをしないように)必要量に見合ったワクチンの購入も呼びかけている。

 おたふく風邪ワクチンは、多くの自治体が費用助成をしているが、計2回の接種は原則自費の任意接種。多くの小児科クリニックが、ワクチンの在庫や受け持つ患者の必要度をみて対応している。(熊井洋美、市野塊)

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日本脳炎おたふく風邪(ムンプス)〉日本脳炎は、ブタの体内で増幅された日本脳炎ウイルスが蚊(コガタアカイエカ)を介して感染し、感染した100~1千人に1人が発症。2019年は9人の患者報告があった。意識障害筋肉の硬直などを伴う急性脳炎を起こし、重い後遺症が残る割合が高い。おたふく風邪では耳下腺が大きく腫れる特徴で知られ、髄膜炎のほか、思春期では睾丸(こうがん)炎や卵巣炎を伴う例もある。難聴の障害が残る例もあり、日本耳鼻咽喉(いんこう)科学会によると15、16年の2年間で少なくとも359人がムンプス難聴を発症した。