米政権、対北政策見直しの背景 トランプ政権の失敗反省

有料会員記事

園田耕司=ワシントン、神谷毅、鈴木拓也=ソウル、安倍龍太郎、佐藤達弥
[PR]

 バイデン米政権が対北朝鮮政策を見直し、歴代政権と異なる方針を固めた。日韓の政府関係者からは歓迎の声が聞かれたが、北朝鮮との交渉の見通しは立たず、非核化への道は遠い。

 バイデン政権が対北朝鮮政策の見直しを始めたきっかけは、歴代米政権の失敗への反省からだ。

 特にバイデン政権が「グランドバーゲン(一括取引)」と呼ぶ政策では、トランプ大統領(当時)が2018年6月にシンガポールでの初の米朝首脳会談で「朝鮮半島の完全な非核化」に合意し、交渉を開始。19年2月のハノイでの首脳会談で、トランプ氏は「すべての核施設の廃棄=経済制裁の全面解除」を提案したが、決裂した。交渉は停滞し、北朝鮮は核・ミサイル開発を続けた。

北朝鮮に対価与える可能性

 バイデン政権の「現実的アプローチ」の中身は公にされていない。複数の米政府関係者によれば、非核化に向けて北朝鮮と段階的に合意し、北朝鮮に対価を与える手法となる可能性が高いという。

 バイデン政権の北朝鮮問題担当チームと意見交換したロバート・アインホーン元国務次官補(核不拡散担当)によれば、北朝鮮が核物質製造禁止や核・弾道ミサイル実験禁止といった約束を守る対価として、朝鮮戦争の終結宣言▽平和条約締結交渉▽両国の連絡事務所設置▽国連安保理制裁決議の一部の一定期間停止などが考えられるという。

 この手法は長期間の交渉を要し、日本などでは「北朝鮮を事実上の核保有国家として認めることになる」との指摘もある。新たな対北朝鮮政策に「段階的」という呼称が使われない背景には、こうした懸念への配慮があるとみられる。

 バイデン政権は2月中旬から北朝鮮側と接触を図っているが、実現できていない。ワシントンの外交筋の間では、北朝鮮バイデン政権の様子見を続けており、対北朝鮮政策を見直しても、膠着(こうちゃく)状態はすぐには打開されないという見方が強い。

 ただ、北朝鮮は米韓合同軍事演習の中止や制裁解除などの「果実」を得られる確証がなければ交渉に応じそうにない。金正恩(キムジョンウン)総書記にとって、一部の反対を押し切って臨んだハノイ会談の決裂は、国内で「誤らない」とされる最高指導者の権威を大きく傷つけた。韓国政府の高官は「ハノイでの正恩氏の失望は大きかった。米国との交渉に踏み出すうえでの後遺症になっている」と分析する。

 当面の焦点は、米国に要求を受け入れさせるため北朝鮮が軍事的行動に踏み出すかどうかだ。この高官は「バイデン政権からは何も得られず、強硬姿勢を示さないと国内で威信も保てないと判断した時だろう」と指摘する。

 すでに米韓の情報当局は新型の潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の発射準備の兆候をつかんでいる。「新型潜水艦の進水式やSLBMの発射を行う日は近い」とみる韓国の専門家もいる。

■正恩氏、長期化対立に備える…

この記事は有料会員記事です。残り1769文字有料会員になると続きをお読みいただけます。