湯治で出会った棚田、ひと…「伝えたい」 夫婦で写真集

坂田達郎
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 湯治で通うようになった肘折(ひじおり)温泉をきっかけに、山形県大蔵村の四季や人にほれこんだ夫婦が写真集を自費出版した。村と出会ってから10年の間に、活気が失われつつあると感じてきた。「写真で村の魅力を伝え、まちも、人も元気になってほしい」と願う。

 山形県寒河江市で会計事務所を経営する芳賀長悦(ちょうえつ)さん(68)、和代さん(68)。タイトル「七十二候(しちじゅうにこう)うつろい」に、日本の原風景が残る豪雪地帯で、季節の変化が強く感じられる村への思いをこめた。

 和代さんの病気がよくなるようにと、名峰・月山(がっさん)のふもとにある開湯1200年の湯治場、肘折温泉を訪れるようになった。

 一眼レフカメラを買ったばかりだった和代さんが、最初に撮った1枚が2010年の「人力車が行く」。観光案内で知られる人力車が駆け抜ける風景だ。背景に写る旅館はすでに閉館し、いまはもうない。

 「写真を撮るのが楽しくなっていった」という和代さんは、毎月1~3泊のペースで湯治に訪れるうちに、体もよくなり、温泉郷の人たちと言葉をかわすようになる。長悦さんも3年ほど遅れて本格的に撮りはじめ、2人で「四ケ村の棚田」やブナ林、朝市、祭りなどを撮影。村に入り込み、村民や湯治客の自然な表情をとらえていった。

 15年の「ぼく2才です」では、旅館の縁側に座る女性4人が満面の笑みで男の子を見つめる。部屋の中には布団が見え、長悦さんは「湯治で長く泊まったのでしょう。ただ、湯治をする人は年々少なくなり、かつてのお客さんは高齢化して来られなくなっている」と話す。

 昭和の雰囲気を残す温泉郷は、時代の変化とともに人影が減り、コロナ禍が追い打ちをかけた。2人は1年前、「にぎわっていたころの温泉街や湯治客の笑顔を伝えよう」と写真集を企画。10年にわたり撮ってきた写真から約165点を厳選した。

 独学で写真の腕を磨いた。和代さんが全国的なフォトコンテストで大賞に輝いたり、長悦さんも数々のコンテストで上位に入ったりするようになった。今回は写真集を作るためではなく、感動したり、興味をもったりして撮った写真の集大成。2人は「村の人たちも喜んでくれた。たくさんの人が訪れ、にぎわいを取り戻すきっかけになれば」と声をそろえる。

 写真集は2640円(税込み)で1千部作成。問い合わせは芳賀長悦会計事務所(0237・86・5589)へ。(坂田達郎)