怪しさ満点、入りづらすぎる古着屋「少数派のための店」

松田果穂
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 住宅街の一軒家の窓に、「群馬昭和婦人天国」の文字を見つけた。表に回ると、独特の雰囲気を醸し出す置物やマネキンと目が合った。何だここは。

 入り口には来る者を拒むかのような金網が。「少数派のための少数派のお店 普通の人間は買う物ありません」という看板も目に入った。

 入りづらすぎる。

 私は、ためらいながら店の扉を開けた。

 12畳ほどのスペースに服や帽子が天井まで壁中びっしり。大人1人がやっと通れるほどの通路の奥から、店主の立岩淳さん(47)が迎えてくれた。

 「OIL」は、立岩さんが1人で切り盛りする古着店だ。表の看板について聞くと、「相当コアな古着好きじゃないと、本当に買う物がない。知らずに入ってきて気まずい思いをさせるのも申し訳ないかなって」。怪しさ満点の雰囲気とは裏腹に、屈託のない笑顔と物腰柔らかな話し方に、少しほっとした。

 1960~70年代の国産古着を中心に扱い、特にレトロなワンピースが人気だ。裾が広がったベルボトムやチューリップハット、ビンテージの革靴。70年代の漫画キャラが描かれたリュックやコップも。ん? どこからか視線を感じる。義眼を使った指輪やネックレスが、カウンターからこちらを見つめていた。

 「子供の頃から人を驚かせるのが好きだった」という立岩さん。リアルなヘビのおもちゃや、本当に刺さったように見えるマジックナイフなど、ジョークグッズを集めていたという。

国内の古着がこだわり 微妙なダサさがいとおしい

 高校生になると、パンクやロックの音楽にはまった。店名の「OIL」も、この頃に流行していたクラブイベントの名前から取った。「ファッションはいつか廃れるが、思想や文化が底に根付く『スタイル』はなくならない。ロカビリーやヒッピーが好きでした」

 群馬県内の服飾専門学校を卒業後は洋服店に就職し、30歳で独立。前橋市内で古着店や喫茶店を営みながら場所を転々とし、6年ほど前にこの場所に移った。

 国産の古着にこだわる。作りがしっかりしていて大切に着られてきたものが多く、状態が良いから。それに「アメリカやヨーロッパにかぶれて、日本でまねて作ったとみられる服の絶妙なダサさがいとおしい。本家とは違う魅力がある」と言う。

 古物店だけでなく、家や店などの解体業者、廃品回収の業者も回って商品を仕入れる。店頭に出ているワンピースだけでも、およそ600点。他の商品も含めると、数え切れない。映画などの衣装として使うため、希少な古着を求めて県外から訪れる人もいるのだという。

 レトロでサイケデリックな雑貨や文化は「不思議な引力がある」と語る。「悪趣味でも、不良っぽくてびっくりするものは、いつまでも心に残る。大人に『見ちゃダメ』と言われても余計に見たくなるような、子どもに憧れられる店でありたい」(松田果穂)

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 古着屋OIL 前橋市前箱田町117の1。JR新前橋駅から約2キロ、徒歩約25分。関越道前橋インターチェンジ(IC)、高崎ICからそれぞれ車で約10分。午後1時ごろ~7時ごろ。月曜定休。ツイッターは@oil69231155。インスタグラムはoil_jun。