サッカー精鋭たち、10年ぶり福島に 「活躍で勇気を」

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力丸祥子
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 原発事故により静岡県に練習拠点を移していた日本サッカー協会(JFA)の選手育成組織「JFAアカデミー福島」が4月、10年ぶりに福島県内で活動を再開した。トップ選手を目指す中学生を受け入れ、地元の期待は膨らむが、コロナ禍も影響し地域との交流や定着への不安もある。

 4月下旬、福島県広野町立広野中学校の校舎3階の教室から元気な声が響いた。

 「わっ、反応早すぎ!」「その単語、私も狙っていたのに」

 1年生が机の上に英単語カードを並べ、先生が読み上げた単語を素早く見つける「単語カルタ」に挑戦。新入生33人のうち19人がアカデミー生だ。町出身の八巻隆悟さん(12)は「方言の違いは大丈夫かな、とか不安だったけど、アカデミーの子はみんなおもしろいし、楽しい」と話した。

 アカデミー福島は2006年、判断力やリーダーシップを備えたエリートサッカー選手を中高一貫で育成しようと、JFAと県などが設立。全国から集まったトップレベルの中高生の男女が地元の学校に通いながら、寮で暮らし、サッカーの聖地「Jヴィレッジ」(楢葉町・広野町)周辺で技術を磨いた。

 地域のサッカーレベルを上げ、大会の誘致で選手や関係者が訪れて地域経済を潤した。一方、「サポートファミリー」として協力する約40の地元の家庭が週末に選手をホームステイで受け入れるなど「町民の誇り」でもあった。

 しかし、東京電力福島第一原発の事故により、避難指示が出て、原発から20キロ圏にあるJビレッジは対応拠点となった。アカデミー福島は静岡県御殿場市裾野市に拠点を移し、練習を続けてきたが、今春、宮城、新潟、長崎など全国13県から選ばれた16期生の中学1年の男子生徒19人が戻ってきた。

 Jヴィレッジであった入校式では、代表の田村悠真さん(12)が「僕たちの活躍で、この地のみなさまを勇気づけます」と決意表明した。震災前、アカデミー生が通う広野中の生徒は229人だったが、昨年度は68人にとどまる。今後は毎年15人ほどのアカデミー生の入学が見込まれる。

 1年生の坂本沙耶香さん(12)は「お調子者で、サッカーをしている姿を想像できない子もいる。応援に行って、試合に出ているところを早く見てみたい」と笑う。小林喜徳校長は「グローバルな夢を持つ仲間との出会いは、町出身の子にも刺激になる。震災や原発事故などについても一緒に学び、相乗効果の成長をして、広野を背負って立つ人に育って欲しい」と期待する。

 一方、新型コロナウイルスの影響が影を落とす。感染防止のため、震災前に行っていたホームステイなど地元との交流がなかなか行えない。アカデミー1期生で、コーチの佐藤令治さん(27)はサポートファミリーと体験した田植えや、下校中の寄り道でおまけしてくれたパン屋の夫婦を懐かしく思い出す。「ここが『第二の故郷だ』と思えるのは地元のみなさんと交流があったから。見守っていただけたこと、応援が力になった」と振り返る。

 サポートファミリーの一員で、町職員の飯島洋一さん(53)はアカデミー生を招いて自宅の庭でバーベキューをしたり、川に生息する昆虫などの観察会を開いたりするのを楽しみにしている。「アカデミー出身の選手の活躍は、町民の誇り。コロナが収まって町内で大会などがあれば、地域のにぎわいも期待できる。地域と関わる機会を作っていきたい」と話す。

 拠点を移していた10年間で…

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