男女平等11位、ドイツの実態 女性役員が少ないわけ

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ベルリン=野島淳
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 世界経済フォーラム(WEF)が3月に発表したジェンダーギャップ(男女格差)に関する報告書で11位だったドイツは、120位の日本よりはるかに高い。メルケル首相ら政治の場での女性の活躍も目立ち、男女平等が進んでいる印象がある。ところが、実は企業で活躍する女性リーダーは多くなく、法律で女性取締役の割合を義務づける動きも出ているという。ドイツの社会には、どんな「壁」が隠れているのだろうか。

「男性はキャリア、女性は家事」

 今年3月時点で、ドイツの主要30社(株価指数DAXの構成企業)のうち、最高経営責任者(CEO)に女性は1人もおらず、5社は1人も女性取締役がいなかった。上場160社に広げてみても、取締役のうち女性の割合は12・3%。2020年9月よりは2・2ポイント増えたが、米国の約29%、スウェーデンや英国の約25%、フランスの約22%に比べると見劣りする。

 こんな調査結果を発表したのは、ドイツとスウェーデンに拠点をもつ「オールブライト財団」。企業で女性管理職を増やすことを提唱する非営利団体で、定期的に各国企業の女性取締役の割合を調べている。

 結果について、ウィープケ・アンカーセン共同代表に尋ねると、「ドイツでは男性がキャリアを積み、女性は家事や家族の世話をしつつ、少しでも収入を得るという根強い規範が残っている」と説明した。日本と同じような風土が残っているようだ。

 もっとも、日本はドイツよりずっと低い。内閣府の資料によると、上場企業の取締役と監査役、執行役を合わせた数字でみても、約6%にとどまる。

 ただ、共通する問題点もある。アンカーセンさんによると、ドイツでは夫婦の双方がたくさん稼ぐと税率が上がる仕組みがある。保育施設の不十分さもあり、就労時間が週20時間に満たない女性が、ほかの欧州諸国より多いのだという。必然的に管理職になる女性が少なくなり、取締役の候補者も少なくなってしまう。

 仮に女性取締役の候補者がいたとしても、男性が選ばれる傾向もある。うまくいっている企業ほど「勝ちゲームの手法を変えるリスクは取りたくない」との発想になるからだという。

 その現象を表したのが「トーマス・サークル」という言葉だ。トーマスは仮定の男性取締役の名前。企業内のどんな男性社会の縮図を表しているのだろうか。

 男性取締役のトーマスは自分と考え方や経歴が似た「別のトーマス」を身内に引き入れたがる。組織にストレスが少なく、メンバーは快適だからだ。こうして同質的な人物が経営陣に増えるという構図だ。

 アンカーセンさんは「女性の取締役が増えれば会社の人事に、『トーマスに似ているかどうか』以外の実力主義が根付く可能性がある。優秀なのに昇進機会がなかった人を使いこなす契機になる」と話す。

女性枠、道具として賛成

 ドイツ政府は今年初め、3人以上の取締役がいる上場企業は、少なくとも1人を女性にすることを義務づける法案をまとめた。現在、連邦議会で審議中だ。すでに監査役会で女性の割合を30%以上にするよう義務づける法律はある。

 いずれも女性を増やして議論が多様になれば、創造性が増して業績が上がり、危機管理もこなし、長期的な企業の成長につながるといった考えが背景にある。

 「女性枠は道具としては賛成と言わざるを得ない」とヒルトルート・ウェルナーさん(55)は話す。ドイツを代表する世界的自動車メーカーのフォルクスワーゲン(VW)で、「高潔さと法務」の担当取締役を務める女性だ。

 ウェルナーさんは、女性に能力があれば「割り当て」は要らないと思ってきた。

 だが、年を重ねるにつれ、「…

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