マンチェスターUファンが暴動で試合延期 埋まらない溝

ロンドン=遠田寛生
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 「欧州スーパーリーグ」構想で高まったファンの不満は、いっこうに収まる気配が見えない。

 イングランドプレミアリーグは2日、英国時間同日午後4時半(日本時間3日午前0時半)から開始予定だったマンチェスター・ユナイテッド(U)対リバプール戦の延期を発表した。現在2位のマンチェスターUにとって、長年のライバル、リバプールとの一戦で、負ければ、同じ街のマンチェスター・シティーの優勝が決まってしまう大事な一戦だった。

 原因はファンの暴動だ。

 試合の数時間前から、試合会場となったマンチェスターUの本拠オールド・トラフォードや、選手らが宿泊したホテル周辺に大勢のファンが集まった。オーナーグループである、米国出身のグレーザー家に対しての抗議だった。

 地元警察によると、次第に攻撃的に変わったという。スタジアムには1千人以上が集まり、勢いづいた100人以上がスタジアム内に侵入。ピッチにも立った。身の危険を感じたスタッフは部屋に鍵をかけて閉じこもり、警察官2人の負傷も報告された。

 クラブから報告を受けたプレミアリーグは、警察や行政側とも協議し、安全面を考えて延期を決めた。「気持ちは理解し、尊重もするが、全ての暴力的行為や器物損壊、不法侵入を非難する」などと声明を出した。

 発端は、積もり積もった因縁と言うべきだろうか。

 もともとマンチェスターUのオーナーとファンの間には埋められない溝がある。

 膨れあがったのは、2005年だ。米プロフットボールリーグNFLのタンパベイ・バッカニアーズのオーナーでもあるグレーザー家が、巨額の資金でクラブを買収。伝統的な強豪クラブが外国のオーナーの手に渡った事実と、数年前から水面下でクラブの株を買うなどの手法も反発を買った。

 そして、先月の「欧州スーパーリーグ」騒動が、今回の引き金となる。マンチェスターUは現場やファンに黙って、強豪20クラブだけが参戦する新リーグ構想に参加を決め、中心的な役割を果たしていた。

 結局、現場やファンからの猛烈な批判を受けて撤退を表明。謝罪の声明も出したが、くすぶっていた不満はあふれるばかりだ。多くのファンは、グレーザー家にクラブの売却を要求。先月下旬にも、一部ファンが練習場に侵入して抗議することがあった。

 マンチェスターUは声明で「我々のファンはクラブに対してとても情熱的だ。表現の自由と平和的な抗議の権利については認めている」と一部への理解を示しつつも、「他のファンやスタッフ、警察を危険にさらしたことを遺憾に思う」と暴力行為などを非難している。

 今後の行方は分からない。佳境に入ったプレミアリーグに水を差したことには違いない。(ロンドン=遠田寛生)