東京都議会ではかつて、女性議員に対する「ヤジ」が社会問題化した。「男尊女卑」との批判を受けた議会の体質は、あれから変わったのか。都議会に身を置いた当事者たちは、今の議会をどう見ているのか、聞いてみた。
■おじさんたちが起こした「学級崩壊」 塩村文夏参院議員
「早く結婚した方がいいんじゃないか」
都議2年目だった2014年6月、出産の悩みや不妊治療について議場で質問した際、こんな「セクハラヤジ」を受けました。都議会の男尊女卑の体質が、大きな批判を呼びました。
あの日、マイクで話している自分の声が聞こえないほどのヤジが飛び交っていた。からかうようなものから、笑えないセクハラまで。「学級崩壊」のような状態で、これが首都東京の議会なのかと、絶望感でいっぱいになりました。
当時の自民党は選挙で59人を擁立して全員当選した「巨大与党」。セクハラが楽しくて仕方がない「おじさん」たちが議席の大半を占めていたのです。
当時は不妊治療をカミングアウトする当事者も少なく、秘め事のような話題でした。東京の女性が困っている問題を真剣に取り上げたつもりでも、保守的なおじさんからは遠ざけたい話題だったのでしょう。
野党で若手の女性だった私は攻撃されやすい対象でした。「タレントあがり」のような見方もされて、都議会の中では「亜種」でした。
起きたことをツイッターに投稿したら2万回以上リツイートされ、国内外のメディアが次々に報じました。私以上に世の中が驚き、怒っていたと思います。結果的に、1人が謝罪し幕引きとなりました。私としては、他の不規則発言をした議員を特定し、辞任を求める共産党提案の決議案に乗るべきだという思いがありましたが、政治的な話し合いの中でそれができなかった。
それでも、騒動がなければ、セクハラ発言が許される議会がずっと続いていたはず。今、同じことがあれば許されないと分かるだけでも、日本は少し良くなったのかもしれない。そう思うと、ささやかな一歩だったんだろうと思います。
都議会に女性議員が増え、初の女性知事が誕生したことをプラスに捉えています。政治に女性が増えると、それまで光が当たってこなかったけど多くの人が困っている問題が取り上げられるようになります。出産や不妊治療はその一つ。女性にしか分からない問題はあり、当事者の声は強く響くんです。理解を示そうとしない人が占めている議席を一つでも取ってくるのは大きな意味がある。3割の壁を越えるためには、候補者や議席の一定割合を女性に割り当てる「クオータ制」を導入して強制力を持たせることも必要だと思います。
女性が議員になろうとした時に、心ないヤジだけでなく、有権者からのセクハラを経験する人もいます。生きづらさを感じながら仕事をしなくちゃいけないこともある。でも、ものすごくやりがいのある仕事でもあります。各政党も、もっと女性の候補者を増やし、寄り添い、サポートしていく必要があると思います。(聞き手・池上桃子)
しおむら・あやか 1978年生まれ。タレントや放送作家を経て2013年に都議に初当選。19年から参議院議員。立憲民主党所属。
…