「生存権守れ」「緊急事態条項を」 コロナ禍の憲法議論

津田六平、編集委員・北野隆一
[PR]

 憲法記念日の3日、護憲派と改憲派が各地でイベントを開いた。新型コロナウイルスの感染拡大がやまない中、ともに新型コロナにからめた憲法論を展開した。

 護憲派の九条の会などは、国会前で「平和といのちと人権を! 5・3憲法大行動2021」と題するイベントを開いた。感染防止のため、参加人数を絞ってネット中継もした。

 貧困問題に取り組む作家の雨宮処凛さんはあいさつに立ち、「コロナ禍が1年たっても生活困窮者からの相談が相次ぎ、国の救済制度が整っていない。憲法25条の生存権が守られていない」と訴えた。

 あいさつした野党党首たちも、コロナ禍で生活困窮に追い込まれる人々が相次いでいるとして、生存権の重要性を呼びかけた。

 立憲民主党枝野幸男代表はオンラインで、25条の重要性に触れ「社会福祉や公衆衛生を増進する政治が我々に課されている」と説いた。共産党志位和夫委員長も「コロナ危機は憲法に問題があるからではなく、憲法を遵守(じゅんしゅ)した対策を怠った菅政権による人災」と指摘。会場であいさつした社民党福島瑞穂党首も、コロナ禍で困窮を強いられる人に多く会ったとして「25条の最低限度の生活がまったく保障されていない」と述べた。

 また、田中優子・前法政大総長は「この1年のコロナ禍でも、個人の幸福よりも経済や五輪が優先され、企業側に立った非正規雇用問題の放置などが行われてきた」と指摘した。

 一方、改憲をめざす国民運動組織「日本会議」系の団体はこの日、「この憲法で国家の危機を乗り越えられるのか!」と題したフォーラムを開き、ネット中継した。

 フォーラムには、菅義偉首相憲法改正にむけた協力を呼びかけるビデオメッセージを寄せたほか、自民党下村博文政調会長が登壇。「時代の変化に対応できてない憲法。コロナというピンチをチャンスととらえるべきだ」と述べ、改憲の必要性を呼びかけた。国民民主党山尾志桜里衆院議員は「憲法が機能していない」として、9条への自衛隊明記などを訴えた。

 登壇者の一人、日本医科大の松本尚教授は「コロナ禍でわかったのは非常時の医療体制の脆弱(ぜいじゃく)さ。特措法では迅速性に欠ける」と指摘。そのうえで、災害時などに法律ではなく内閣による政令で私権を一時的に制限する「緊急事態条項」を求める声があることを踏まえ、「法的な準備は事が起こってからでは遅い。憲法を改正して、緊急事態条項をつくる好機だ」と述べた。

 基調提言したジャーナリスト櫻井よしこ氏は「国内外で憲法改正を望む声が圧倒的に強くなっている」。先月行われた日米首脳会談に触れ、「中国の独断的な行為を受け入れるわけにはいかない。憲法改正をしないで中国の影響下に入るのか。そんなことはあり得ない」と述べ、緊急事態や自衛隊の条項を含めた改憲を実現すべきだと訴えた。(津田六平、編集委員・北野隆一