動きも食事も退化した娘は「不治の病」 父が動く10年

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堀之内健史
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 ある日、1歳の娘が治療法の確立されていない難病を抱えていることがわかった。父親は病気の研究費をまかない、患者らを結ぶNPO法人を立ち上げた。それから10年。全国約80の患者家族が参加し、継続的に研究助成できるまでになった。ただ、完治への道のりは依然途上にある。

 谷岡紗帆さん(13)は、大阪府枚方市にある自宅居間のソファでテレビアニメを見て、ほほえんでいた。父の哲次さん(44)が寄り添い、頭をなでた。哲次さんにとって、朝と夜、表情豊かな娘と触れ合うのが何よりの「癒やしの時間」だという。

 紗帆さんは国指定の難病「レット症候群」に罹患(りかん)している。言語や運動機能が退行する神経疾患で、歩いたり、話したりができず、介護がいる。異変に気づいたのは1歳になる頃。「ずりばい」ができなくなり、座ってもすぐ倒れ、物をつかめななくなった。食事が離乳食に戻った。

 検査しても原因が分からない。「自分のせいでは」「どこまで後退してしまうのか……」。哲次さんは途方にくれた。繰り返し口に手に入れる行動も見られ、ネットで検索し、「レット症候群」を知った。「不治の病」で突然死のリスクもあると書かれていた。

 専門家がいる福岡県の病院でレット症候群と診断されたのは2010年8月。「覚悟はある程度固まっていた。病名が分かり、霧が晴れるような感じだった」。しかし、研究が基礎段階で、根本的な治療ができないこと。日本には研究費を支援する患者の団体がないこと。診断した医師からは、珍しい病気ゆえに治療や新薬開発などの研究が進んでいないと明かされた。

 「今は無理でも研究が進めば、治るかもしれない」。娘のためにできることは何か。帰りの新幹線で決心し、11年4月、NPO法人「レット症候群支援機構」を立ち上げた。

 目的は、患者や家族同士の交流▽患者と研究者間の橋渡し▽治療法や治療薬の確立に向けた研究費用の助成――の三つ。哲次さんの勤務先の工務店の社長も理事になってくれ、協力してくれた。はじめは仕事でつながる人にパンフレットを配り、寄付を依頼した。ネットでも啓発活動をし、徐々に会員や寄付が増えた。

 寄付をもとに14年からは、公募した研究に毎年計200万円の助成を続ける。毎年、研究者を集めて、進捗(しんちょく)状況などを議論するシンポジウムを開催する。患者家族も入れるようにし、患者と研究者とのつながりもつくってきた。

 17年には日本を含む五つの国・地域の研究者を招いた国際シンポジウムも開いた。参加した福岡県久留米市の聖マリア病院内にある「レット症候群研究センター」の松石豊次郎センター長は「国内外の研究者や患者との架け橋になっている」と評価する。

 ただ、その一方で、哲次さんは希少疾患の研究の難しさを痛感しているという。「当事者の数が少なく、声を上げないと埋もれてしまう。患者団体が中心になり、国や研究者、企業を巻き込む必要がある」と話す。

NPOでは寄付を受け付けている。詳細はウェブサイト(https://www.npo-rett.jp/index.html別ウインドウで開きます)で。

 哲次さんは仕事のかたわら…

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