シンガポールの主要紙、NPO化 収入減ネットで補えず

シンガポール=西村宏治
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 シンガポールの主要紙ストレーツ・タイムズなどを発行するシンガポール・プレス・ホールディングス(SPH)は6日、同紙などのメディア事業を分社化し、非営利団体(NPO)化すると発表した。部数減に伴う広告収入の減少が続いているため、メディア部門を切り離し、不動産事業などに注力する。

 新聞の発行を中心とした事業を引き継ぐ新会社「SPHメディア」を設立し、SPHが初期の財源として8千万シンガポールドル(約65億円)の現金と、3千万シンガポールドル(約25億円)相当のSPH株などの資産を振り分ける。その後は官民から資金を募って事業の継続をめざす。7~8月に予定している臨時株主総会での決議と、当局の承認が前提となる。

 SPHは1984年、新聞や出版を担う3社が集まって生まれた。1845年創刊の英字紙ストレーツ・タイムズをはじめとした国内のほとんどの新聞の発行を担っている。

 だが、ここ数年は部数の減少に伴う経営難に直面していた。ストレーツ・タイムズは2015年の約30万部が、2020年には約16万部に急落。広告や販売の減少によりメディア部門の営業収益は5年間で半減し、20年8月期には同部門が1140万シンガポールドル(約9億円)の初の税引き前赤字を計上していた。

 一方、同紙のネットによるデジタル購読件数は、15年の約18万件から20年の約30万件にまで増え、紙の発行部数を上回るようになった。しかし同社は「デジタル購読とデジタル広告は紙の収入減を補えていない。メディアビジネスの赤字はさらに広がるだろう」とみている。

 SPHはメディア事業のほかに不動産事業などを手がけている。シンガポール証券取引所に株式を上場しており、今後も上場は維持してさらなる事業の拡大をめざす方針だ。

 新聞事業を非営利とする動きは世界中で起きており、英ガーディアンなども非営利団体の傘下にある。SPHメディアも同様に非営利での事業の継続をめざすとしており、SPHのリー・ブンヤン会長は「メディア部門はより持続可能な財務基盤を持つことになると期待している」とする談話を出した。(シンガポール=西村宏治