コロナ禍で技能実習生来日できず 野菜生産に影響

新型コロナウイルス

柳沼広幸
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 群馬県内の労働現場に欠かせない外国人の技能実習生らが、新型コロナウイルスの影響で来日が遅れている。手作業で収穫する野菜の産地では、国内に滞在する外国人らを雇うなど農家が対応に追われている。

 赤城山のふもと、昭和村糸井の畑では収穫期を迎えた。村国際農業交流協議会の戸部一夫会長(57)のビニールハウスでは、ホウレンソウが青々と育っている。

 「今年は作付けが減るかもしれない」と、戸部さんは心配顔だ。4月から働く予定だったベトナム人技能実習生2人が来日していない。

 ビニールハウス60棟でホウレンソウを生産する。妻と長女との家族3人では手が足りず、中国人の技能実習生3人と、繁忙期には日本人のパートを雇う。そこにベトナム人2人が加わる予定だった。ホウレンソウは年に3~4回収穫する。労働力が2人欠けると、年間で約1千万円の減収になるという。

 「東京オリンピックが開催されれば景気もよくなり野菜の値段も上がる。開催できないようなら技能実習生も来日どころじゃない。早くコロナは収束してほしい」と願う。

 JA利根沼田によると、昨春も技能実習生がコロナで来日できず、遅れて今年1月に80人が入国。今春は中国とベトナムから約50人来てもらう予定だが、見通せない。レタスやホウレンソウ、小松菜などの収穫が始まったが、労働力を確保できなければ生産も減る。

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 浅間山のふもとの嬬恋村では、キャベツの苗の植え付け作業が本格化している。夏秋キャベツの生産で50年連続日本一だ。

 農家の男性(66)は「植え付け作業を例年より10日早く始めたが、寒さが続き凍ってしまった。約70アール植え直しだ」と嘆いた。

 一緒に、昨年から働くミャンマー人が慣れた手つきで苗を植える。今年は技能実習生をもう1人雇う予定だが来日できず、日本滞在中の外国人を探している。

 JA嬬恋村によると、今年はミャンマーとインドネシアの技能実習生約150人と契約したが来日できない。派遣会社を通して国内に滞在する外国人ら110人を確保し、残り40人を募集している。何とか5月中には手配できるという。

 大規模なキャベツ農家で構成する嬬恋キャベツ振興事業協同組合(干川秀一理事長)は、技能実習生や特定技能の外国人83人と契約したが、来日は難しいと判断し、代わりに国内にいる外国人を確保した。

 「どこの産地も労働力が必要で、国内にいる外国人の取り合い。時給も高くなり人件費が上がっている」と同組合の橋詰元良事務局長(58)。技能実習生は時給840円ほどだが、今年は1100~1200円。「人件費のかかり増し分は国から支援があるが、6月まで。延長してほしい」と話した。

 昨年は、コロナで休業や営業短縮をしたホテルや旅館の従業員などの日本人にも働いてもらったが、今年はホテルなども営業しており、日本人の雇用は難しいという。(柳沼広幸)

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 群馬県内で働く外国人 群馬労働局によると、2020年10月末現在の外国人労働者は、前年同期比5160人増の4万4456人で過去最高。このうち技能実習生は1万234人で年々増えている。派遣・請負事業所に雇用される外国人が1万7548人と多い。輸送用機械器具などの製造業は1万4974人、農業は1490人だった。

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