黒人暗殺、不妊計画の過去…ドクター・デスは現役の医師

有料会員記事

ケープタウン=遠藤雄司

拡大する写真・図版バッソン氏がいまも診療を続けている施設の入り口=4月22日、南アフリカ西ケープ州、遠藤雄司撮影

[PR]

 「ウォーター・バッソンが何者なのか、あなた方は思い出す必要がある」

 今年1月、南アフリカの70歳の白人心臓専門医を名指しし、廃業を求めるなどの批判コメントがツイッター上で殺到した。バッソン氏は、その経歴から「ドクター・デス」とメディアに呼ばれている。白人政権が法的に有色人種を差別していたアパルトヘイト(人種隔離)時代、軍が極秘に進めた生物化学兵器開発計画「プロジェクト・コースト」のトップを務めた人物だ。

 プロジェクトから供給された薬物により、体制に刃向かう人々に対する多くの暗殺が実行され、黒人を不妊にして人口を抑える構想まで存在したと指摘されている。そのような極秘プロジェクトを指揮したドクター・デスが、なぜ今も医療行為を続けているのか。バッソン氏が現役医師であるという「発見」のツイートは驚きをもって迎えられた。投稿は700回以上リツイートされ、騒ぎは地元メディアや英BBCなども取り上げた。

ドクター・デスは本当に今も現役医師なのか。過去の行為をどのように思っているのか。記者は本人を訪ねましたが…。

 バッソン氏は南ア有数の医療機関メディクリニックが所有する施設で診療をしており、同社のホームページには名前や顔写真が掲載されている。このため、同社に対する批判の声もあがった。メディクリニックはツイッターの公式アカウントで「法律上、医師は独立した開業医であり、メディクリニックに雇用されることはない。バッソン医師を含む南アフリカ医療専門家協議会に登録している医師は、法律で禁止されていない限り業務を禁止することはできない」と釈明した。

 だが、バッソン氏が開業している西ケープ州で暮らす黒人ヤンディサ・ガンギさん(42)は「人殺しのための計画を一度指揮した人間を、どうやったら信頼できるというんだ。彼が医療行為を続ける間に、新しいウイルスを作って我々に対して使うかもしれない。すぐに辞めるべきだ」と訴える。

医師は白い日本車で現れた

 バッソン氏は同国南部西ケープ州にあるメディクリニックの病院に隣接する施設でいまも日常的に診療にあたっているという。本当に現役で働いているのなら、話を聞いてみたい。メールを送っても返信がなく、電話をかけても受付の女性に「不在です」と回答されるばかり。直接、訪ねてみることにした。

拡大する写真・図版ウォーター・バッソン氏が診療をしている建物には、「心臓専門医」と書かれた看板が掲げられていた=4月22日、南アフリカ西ケープ州、遠藤雄司撮影

 4月23日午前8時過ぎ、記者はバッソン氏が診療するという施設にたどり着いた。大通りから一本横道に入ってすぐの施設周辺は、閑静な住宅街が広がっていた。開きっぱなしの正門を通った先にある2階建ての建物には「心臓外科医 ウォーター・バッソン」と書かれた看板が掲げられている。ここで間違いなさそうだ。

 門の前で30分ほど待ってい…

この記事は有料会員記事有料会員記事です。有料会員になると続きをお読みいただけます。