国に帰れず9歳女児は息絶えた IS家族キャンプの惨状

有料会員記事

イスタンブール=高野裕介
[PR]

 過激派組織「イスラム国」(IS)の戦闘員の家族らを収容するキャンプの治安や生活環境の悪化に、国連などが懸念を強めている。教育や医療を受ける機会が乏しく、子どもたちは行き場を失っている。ISの過激思想の温床になっているとの指摘も出ている。(イスタンブール=高野裕介)

 「まさに住民同士が殺し合っている状態だ。放置すれば『時限爆弾』になる」。隣国イラクとの国境に近いシリア北東部アルホルのキャンプで働く援助団体の女性(23)は、朝日新聞の取材にそう危機感を募らせた。

 国連などによると、内戦が続くシリアで最大規模のこのキャンプは約6万人の住民を抱え、IS戦闘員の家族も多い。2019年3月に陥落したシリア最後のISの拠点にいた人々らが収容された。大半はシリア人とイラク人だが、ISに加わった欧米やアジアなど出身の外国人戦闘員の家族ら約1万人も暮らす。

〈過激派組織「イスラム国」(IS)〉 2014年6月にイラク第2の都市モスルで「国家」の樹立を宣言。シリア北部ラッカを「首都」と位置づけて一時はシリアイラクの領土の3分の1を支配し、世界中から信奉者が集まった。イスラム教の教えを極端に解釈し、従わない住民を処刑するなどして恐怖を植え付けた。その後、米軍主導の有志連合による空爆などで弱体化し、イラクは17年末にISとの戦闘完了を宣言。19年3月にトランプ米大統領(当時)が勝利宣言し、シリアにある最後の拠点を失った。

根深いIS「思想」 銃撃や斬首

 キャンプにはびこる最大の脅威は、暴力とISの「思想」だ。援助団体の女性によると、住民はISがかつて支配地で女性に強制した全身を覆う黒い布を着用するよう今も脅されている。また、子どもの野外教室で音楽を流すと「やめなければ殺す」と言われたという。ISは支配地域で音楽を聴くことを禁じていた。この女性は、「常に恐怖を感じている」と声をひそめる。

 一帯を実効支配するクルド人勢力は3月下旬、キャンプ内で大規模な掃討作戦を実施。クルドメディアによると、これまでに125人以上を逮捕し、治安はある程度回復したという。

 医療支援にあたる国際NGO「国境なき医師団」は3月2日、スタッフの1人がキャンプ内のテントで殺されたと発表。「悪夢を終わらせなくてはならない」と訴えた。キャンプでは殺人事件が横行し、国連やクルドメディアによると、今年に入ってすでに約50人が犠牲になった。斬首や銃撃される事案もあったという。4月中旬にはイラク人男性が頭や腹部を何度も撃たれて死亡するなど、安全にはほど遠い状態が続いている。

受け入れ拒否する出身国

 キャンプの住民の8割以上は…

この記事は有料会員記事有料会員記事です。有料会員になると続きをお読みいただけます。