「心から笑えない」 大津園児事故2年で遺族が心境公表

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 大津市の県道交差点で2019年、右折車と直進車が衝突し、巻き添えで保育園児ら計16人が死傷した事故をめぐり、遺族らが7日、自動車運転死傷処罰法違反(過失運転致死傷)の疑いで書類送検された直進車の女性(64)の不起訴処分を不服として、大津検察審査会に審査を申し立てた。事故から2年。2歳の息子を失った遺族が、弁護士を通じてコメントを出した。全文は以下の通り。

   ◇   ◇

 あの日から約2年……。

 今でも悪い夢をずっと見ていて、目が覚めたら息子が元気に走り回っていて、「なんや―夢か―」「夢で良かったー」ってなるような不思議な気持ちのままここにいます。

 でも2年経っても目が覚めません。現実だからです。

 寂しいです。悲しいです。つらいです。

 息子と一緒に平穏な生活をしていた頃の、日常のほんの当たり前の風景を思い出します。息子はラーメンが好きでした。熱くても冷めるまで待てずにフーフーしながら食べていました。

 年長の子どもたちと同じことをしたがる年ごろでもありました。お姉ちゃんと同じようにスイミングにも通いたいと言っていました。もう少し大きくなってから通わせるつもりでしたが、チャレンジさせてあげればよかったと後悔しています。

 普通に成長していればいろんなことをやらせてあげられたはずですが、今となってはそれがかなわないことが悔しいです。

 息子のお気に入りだった仮面ライダーのベルトは今も置いてあります。息子の持ち物で捨てたものはありません。まだ捨てる気にはならないのです。

 私たちの中では息子はまだ生きています。誕生日プレゼントやクリスマスプレゼントも買ってあげています。クリスマスプレゼントにはスイッチのカセットを買ってあげました。「きっとお姉ちゃんとコントローラーの取り合いしてるで」などと、遊んでいる姿を妻と一緒に想像して笑いあっています。

 しかし、息子がいないことは私も妻も分かっています。日常のたわいないことで笑うことがあっても、心から笑うことはありません。

 私たちの笑顔はそんな罪悪感のような思いを胸に隠しながらの笑顔です。以前のような笑顔になることはもうないのだと思います。

 今年の1月に不起訴になった直進車のドライバーに会うことにしました。

 私が普通の状態ではないからなのか、髪形も服装も謝罪の言葉も、全てが作られたものに見えました。

 そしてその人は言いました。「今日会いに来るのは怖かった」と。その言葉を聞いて私は耳を疑いました。謝罪をする人が吐く言葉ではありません。私がどんな思いで会うことを決めたか、どんな思いで息子を殺した人に会いにきたのか……、きっとわかりもしないのでしょう。

 まるでひとごとのような感じを受けました。そのことが今回の申し立てを決めた一番の理由です。

 もしかしたら、不起訴になってる以上、私がおかしいのかもしれません。罪の意識がないのも当たり前のことかもしれません。でもブレーキも踏まず息子たちに痛い思いをさせた以上罪がない人にはできません。

 たった2歳で死んだ息子のために私たち残された家族がしてあげられるのはそれぐらいしかありません。

 直進車のドライバーは右折車に気が付いてから死傷の結果を生じさせるまで全くブレーキを踏んでいません。検察審査会の皆さんにはそのような運転が全く処罰されなくてもいいのか、そのことをしっかりと判断してほしいと思っています。