高齢者の医療費2割負担、採決強行 健康への影響調べず
一定以上の収入がある75歳以上の高齢者を対象に、病院などの窓口で支払う医療費の負担を1割から2割に引き上げる関連法の改正案が7日、衆院厚生労働委員会で自民、公明両党などの賛成多数で可決された。改正案は現役世代の負担の軽減がねらいだ。立憲民主党や共産党は、負担増で高齢者が受診を減らす可能性があるとしてさらなる審議を求めたが、今国会成立をめざす与党側が採決を強行した。
7日午後の野党議員の質問が終わると、自民党が採決を提案した。議事を進める渡嘉敷奈緒美・衆院厚労委員長を野党議員数人が取り囲み、「ダメだ! ダメ」と叫んだが、採決は続行。自公両党と日本維新の会、国民民主党が賛成して可決した。来週にも衆院を通過する見込みだ。
一方、立憲は高齢者の窓口負担を引き上げない代わりに、75歳以上の高所得者の保険料上限を引き上げるなどして、現役世代の負担軽減の財源にあてる対案を提出していたが、採決は見送られた。
現在、75歳以上の高齢者約1815万人の9割超は窓口負担が1割で、3割を支払う現役世代などよりも低く抑えられている。高齢で医療費が高くなりやすいためだ。改正案は、1割負担の対象者のうち、年金を含む年収が単身で200万円(夫婦2人なら320万円)以上などの条件を満たす場合、2022年度後半から負担割合を2割に引き上げる。約370万人が負担増になると見込まれる。
75歳以上の医療費は21年度予算で約18兆円。高齢者本人の窓口負担を除く約16・6兆円のうち、約半分は税金で、約4割は現役世代の保険料でまかなわれている。高齢化が進み、今後も現役世代の負担が膨らむことから、政府・与党が昨年末に2割負担の導入を決めた。
窓口での負担が増えれば家計が厳しい高齢者が受診を減らす「受診控え」につながるとの指摘もある。野党側は、病気の兆候がわからず、重症化する心配もあると指摘し、詳細な調査を求めた。
政府も2割負担の導入で受診…