看護学院のパワハラ問題、識者に聞く

三木一哉
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 【北海道】教員によるパワーハラスメント問題が浮上している道立江差高等看護学院では、どうしてこのような問題が起こったのか。組織や教育内容をどう改善していくべきなのか。学校現場のハラスメント問題に詳しい川村学園女子大の内海﨑貴子教授(ジェンダー平等教育)と、看護師の養成教育にも携わった経験がある北海道教育大函館校の斎藤征人准教授(臨床福祉学)に聞いた。(三木一哉)

 パワーハラスメントの加害者の多くは、自分の行為をパワハラだとは思っていない。特に学校現場では「学生は教員の指示に従うべきだ」という考え方が根強いため、教員はハラスメントに陥りやすい。教員は学生の人権を理解し、尊重したうえで、指導の正当性を説明しなければいけない。

 学校を運営する側も、きちんとしたハラスメント防止対策が必要だ。道教育委員会や道はパワハラ防止の指針を設けていたというが、末端まで徹底されていたのだろうか。江差高等看護学院ではパワハラを指摘された教員だけではなく、全教員がハラスメントの定義などを認識、共有していたのか、疑念を持たざるをえない。

 学生や保護者の訴えを受けて、道は教職員や学生から事情を聴いたということだが、ハラスメントが疑われる問題の対応としては不十分だ。道も検討を進めているようだが、弁護士など中立の第三者が調査にあたるべきだ。

 学院側と学生や保護者との間で、看護師教育を巡って認識の差があったようにも思う。学院側は資格取得を重視しているとしても、学生や保護者は教員に対し看護技術以外の人間的な成長や、看護職を担う者としての心構えといった「教育」も求めるものだと思う。こうした看護師の適性について教員間に共通理解があり、それらが保護者や学生にも説明、共有されていたのか、疑問が残る。

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 道内外の看護師や介護福祉士の養成校で教えた経験から、自戒を込めつつ語るなら、「人命をあずかる職場に不向きな人間を送り込むわけにはいかない」という教員側の強い思いが、学生を退学させようというような、行き過ぎた対応を招いたのではないだろうか。

 医療現場では医師や看護師、看護実習生らスタッフが連携して医療に取り組むべきだが、現実的には医師を頂点としたヒエラルキーがある。看護師には医師の言葉が、看護実習生には教員の言葉が絶対という雰囲気も一部には残っている。

 実習現場でも患者の命を守るために高い専門性が求められ、「これをやれないと患者が困る」とか、「看護師になってもらいたくない」とか、きつい言葉が交わされる場面もある。実習生に精神的負荷がかかるのも事実だろう。

 しかし、従来のこうした徒弟制的な育成方法は、今の社会では容認されない。最新の看護師教育に通じた指導のプロを育てつつ、ハラスメント研修などで教員の意識も変えていかなければならない。

 どんな理由でも、教員が学生にハラスメントをすることは正当化できない。教員は適材を探すのではなく、適性を持つ人材に育てる方向へ舵(かじ)を切らなくてはならない。看護師以外の進路を勧めるのなら、成績や学習態度などの理由を挙げ、説明を尽くす必要がある。不足する看護師を志願した若者の多くを退学させてしまっては、地域の医療・福祉のためにもならない。