成長か環境か、悩むベトナム 電力支援、問われる日本

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宋光祐=ハノイ、伊藤弘毅
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 急速に発展するベトナムが、電力需要の伸びへの対応に揺れている。太陽光の発電能力は過去2年で約200倍に急増したものの、送電線の整備が進まず、壁にぶつかっている。「地球温暖化の主因」との批判が強まる石炭火力に、今後もかなりの部分を頼らざるを得ないのが実情だ。経済成長と環境のはざまで悩む姿は、新興国のエネルギー事情にどうかかわるか、日本に問いを投げかけている。

拡大する写真・図版大規模な太陽光発電所の設置が進むベトナム中部のニントアン省。風力発電の開発も相次いでいる=2021年3月11日、宋光祐撮影

 ベトナム屈指のリゾート地に近い中南部ニントアン省。乾燥地で人口が少なく、長らくインフラ整備が遅れてきた。東京電力福島第一原発の事故が2011年に起きる前、日本企業による原発建設計画があった地域だ。16年にベトナム政府が「安全性を見直した結果、財政的に難しい」として計画撤回を正式に決めてから5年、今は大規模な太陽光発電所の建設が相次ぐ。

 中でもホーチミンの土地開発会社「チュンナムグループ」が昨年10月に操業を始めた発電所は出力450メガワットで、東南アジア最大とされる。山に囲まれた平地に約140万枚のパネルが敷き詰められ、周辺では別の太陽光や風力発電所の建設も進む。「ニントアン省が再生可能エネルギーの中心地になるためのプロジェクトだ」。地元人民委員会の委員長がそう話すほど、期待は高い。

 16年に発効した地球温暖化対策の国際ルール「パリ協定」のもと、ベトナムは「30年時点で温室効果ガスの排出を、対策を講じない場合と比べて9%削減」を目標にする。一昨年には民間企業が計測する大気汚染のサイトで首都ハノイが「世界最悪」を記録。国民も環境問題に敏感になってきた。3年前、最大都市のホーチミンで姉が経営する実家のレストランに太陽光パネルを設置したトゥオン・クアンさん(49)は、「大気汚染が深刻なベトナムでは太陽光の普及が必要だ」という。

拡大する写真・図版店の屋根に太陽光発電の設備を設置しているベトナム・ホーチミンのレストラン「フエン・チー」=同店提供

急増の太陽光、にわかに逆風

 ベトナム政府は17年、太陽光の電気をベトナム電力公社(EVN)が高値で買い取る「固定価格買い取り制度(FIT)」を導入した。日照時間の長い中部や南部ではタイや中国企業が投資する大規模な事業用発電や、建物の屋根にパネルを設置する設備が急増。15年時点でゼロだった太陽光の発電電力量は、20年には国全体の4%に伸びた。

拡大する写真・図版ベトナム・ホーチミンのレストラン「フエン・チー」の屋根に設置された太陽光発電のパネル=同店提供

 ところが、今年に入り逆風が吹き始めている。大きな太陽光発電所はニントアン省を始め、人が少ない広大な土地につくられることが多い。送電線網を一から整備するには多くの費用と時間がかかるため、太陽光の急増ペースに追いついておらず、その結果、出力抑制が頻発している。政府は危機感を抱き、グエン・スアン・フック首相(当時)は2月、EVNに再エネ開発計画の見直しを指示した。今年度はFITでの買い取り価格を4割近く下げる案も検討されている。

 経済発展が著しいベトナムで…

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