養豚場でも続くウイルスとの闘い ワクチン接種でも感染

長谷文
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 今春に入り、豚熱(ぶたねつ)の発生が各地で相次ぐ。ワクチンを接種した豚の感染も確認され、養豚の現場でも、ウイルスとの長い闘いが続いている。

 農林水産省によると、今年3月31日以降18日間で、奈良県群馬県三重県栃木県の養豚場で感染が相次いだ。殺処分数は、豚の移動などが確認された関連養豚場を含め7カ所で計約5万8千頭に上る。同省の担当者は「豚熱がこれほど短期間で発生したのは意外」と話す。

 原因ははっきりしないものの、暖かくなって、感染源とみられる野生イノシシの動きが活発になったことが要因の一つとしてあがる。同省の疫学調査チームによる現地調査では、それぞれの養豚場から約10キロ圏内で、豚熱の発生前に、野生イノシシへの感染が確認された。

 豚熱は2018年9月に国内で26年ぶりに感染が確認された。以来2年半余り、養豚場は感染防止策を続けている。

 現在、同省が掲げる感染防止の柱は三つだ。一つはワクチン接種をすること。だが、免疫を獲得できる時期を見極めて接種するのが難しい。生後50~60日ごろで、母豚からもらった免疫が弱まる時期が望ましいとされるが、個体差がある。免疫を獲得できるのは全体の8~9割とされる。

 一定数生じる免疫を獲得できない豚の感染を防ぐにはどうすればいいのか。二つめの柱は、養豚場の衛生管理の徹底だ。ウイルスが養豚場に持ち込まれるのを防ぐ。野生イノシシなどの侵入を防ぐ防護柵の設置や、飼育領域のこまめな消毒などが挙げられる。ウイルスは、感染した野生イノシシの死骸を食したカラスなどによって地表に運ばれる可能性もあり、豚を移動させる際は地面を歩かせず、作業員も手指消毒を徹底して、作業ごとに靴や衣服を交換するなど細心の注意が必要だという。

 同省の疫学調査チームの現地調査では、発生した養豚場ではこれらの対策の一部が不十分だったことが確認された。担当者は「国内で豚熱が発生してから長期間、山のような感染対策の徹底を求められ、養豚現場は非常に疲れていると思う。でも感染を防ぐためには楽して守る方法がないのが実態」と話す。

 三つめの柱は、野生イノシシ対策だ。捕獲を強化し、経口ワクチンの散布を継続する。北海道大大学院の迫田義博教授(ウイルス学)は「豚熱の終息のためには、野生イノシシ対策が一番大事」と指摘する。野生イノシシの間で生じる3密(密閉、密集、密接)を回避させ、野生イノシシの動きを封じ込めることが重要だという。迫田教授は「野生イノシシに走り負けないよう、対策を継続して根気強く実施していくことが何よりも大事」と語る。(長谷文)

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 豚熱 2018年9月、岐阜県の養豚場で国内で26年ぶりに感染が確認された。農水省は約1年後、ワクチン接種を決定。現在は、野生イノシシの感染が確認された地域などを含めて、計30都府県でワクチン接種が推奨されている。18年9月以降、計13県で発生し、関連養豚場も含めて計約23万8千頭の豚が殺処分された。人に感染することはなく、感染した豚の肉が市場に出回ることはないとされる。19年の畜産統計によると、全国の豚の飼育頭数は915万6千頭。