外国人隆盛の大相撲が進むのは柔道、剣道、どっちの道?

竹園隆浩
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 外国出身力士の隆盛が続く角界は、柔道、剣道、どちらの道を選ぶのか。4月に日本相撲協会の諮問機関「大相撲の継承発展を考える有識者会議」がまとめた提言書では、こんな感じで令和の相撲道のあり方が問われた。

 提言書によると、「相撲は武士道の伝統に由来する武道の一つ」として、同じ日本発祥の武道に原点を持つ2競技を参考にする理由を「海外との関わり方において、対照的な道を歩んだ」と説明している。会合には全日本柔道連盟会長で日本オリンピック委員会会長の山下泰裕氏、全日本剣道連盟元監事で弁護士の中井憲治氏を講師に招き、意見も聞いた。

 柔道は講道館創始者、嘉納治五郎が1909年にアジア初の国際オリンピック委員会(IOC)委員に就任するなど、早い段階から国際化に前向きだった。現在、国際柔道連盟の加盟国・地域は200を超える。

 よりダイナミックに観客にアピールするスポーツに変える国際戦略が進んだ。カラー柔道着や一本勝ちにこだわらない判定基準の採用などがあり、「日本柔道の美点と特性の消失である」と分析した。

 一方、剣道については、国際剣道連盟加盟国・地域は約60あるものの、そもそも「国際化」という言葉を使わず、「海外普及」「国際普及」「国際対応」などと、海外に「普及」させるという考えだと紹介した。

 さらに、一本勝ちの定義の中に、打ち込んだあとも油断せずに相手の反撃に備えて緊張を持続する心構えとされる「残心(ざんしん)」があることにも注目。「一般の人にはわかりにくい」としながらも、「日本の伝統文化に培われた剣道の特性を重視している」と評価した。

 その上で、今後の相撲界の対応は「理論的に二つの道がある」と提示した。

 第一の道は「日本人が自然に受け入れてきた神事に由来する伝統・精神・技法をこれからも守るべき原理原則と見なし、この方向で相撲道を継承発展させていく道。この場合、親方制度や相撲部屋などの現行システムは基本的に維持される」というもの。

 第二の道は「大相撲が多元的な要素を受け入れ、脱日本的な共通ルールを作り、歴史と伝統が変容していく道。この場合、親方や相撲部屋などは、多国籍化に合わせて見直しを図ることになる」というもの。

 そして提言書では、第二の道を選べば「大相撲の発展につながるとは思えない」と結論づけて、「剣道」に軍配を上げた。理由としては第二の道を選ぶと、柔道の国際大会などで見られるように「勝利至上主義となり、勝負判定の点数化だけでなく、体格差による階級別の優勝者決定などが導入される可能性が高い」と意見がまとまったとされる。

 提言書を読み終わり、伝統文化的な意味合いのある大相撲では、国内でしきたりをしっかり守るという考え方も理解できた。競技としてみれば、アマチュアに日本相撲連盟がある。そこで約30カ国・地域が参加した世界選手権も開催されており、体重別や将来の五輪入りを目指して女子の競技化にも力を入れている。国際化という意味では、柔道に近い道を歩んでいるアマチュアに世界的な普及は任せるという見方も分かる。

 だが、有識者会議も認めているように、剣道には「言い換えれば、実践する武道であり、観賞されるスポーツではない」と見られてきた側面が存在するのは事実だ。そこには江戸時代から大衆文化としてファンに支持されてきた大相撲とは大きな違いがある。

 大相撲の分かりやすいことが売りの一つである勝負判定にしても、「蛇の目の砂」の伝統を大事にしながら、69年に起こった大鵬―戸田戦の「世紀の誤審」を受けて他競技に先駆けて、いち早くビデオ判定を取り入れた。守っていくものは守っていきながら、それぞれの時代に合わせた柔軟さは必要ではないか。

 提言を受けた日本相撲協会が、今後、土俵をどんな方向に進めていくのか。角界内だけの議論で決めていくのではなく、外の声を聞こうという姿勢が公式に始まっていることは、プラスにとらえていきたい。(竹園隆浩)