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思い出した亡き息子との約束 紙芝居師、コロナ禍の決意

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木村浩之
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 新型コロナウイルスの感染拡大で、この1年活動を休止していたプロの紙芝居師「さるびあ亭かーこ」さんが、再始動の準備を進めている。東京都町田市を中心に活動の場を広げてきたが、公演中止が続き、不安で心が折れた時期もあった。「紙芝居でみんなを笑顔にする」という、亡き長男との約束を思いだし、一歩を踏み出した。

 「つばが飛んじゃった。ごめんごめん。でも、縁起物だからいいことあるよ」

 かーこさんの軽妙な話術が聞かれなくなって1年がたつ。アドリブで観客と会話しながら紙芝居を披露するかーこさんの「技」は、子供からお年寄りまで幅広い人気を集め、警視庁町田署に頼まれて特殊詐欺防止の紙芝居を作るなど、仕事の幅は広がっていた。そこに、コロナ禍が襲った。

 昨年3月以降、観客との距離が近い紙芝居は逆風にさらされ、公演はキャンセルが相次いだ。予定がびっしり書き込まれていた手帳は、ほぼ真っ白に。生活が苦しくなり、昨年5月から病院に就職し、併設する有料老人ホームの食堂で働き始めた。食育の紙芝居を作ろうと取得した調理師の資格を生かし、牛乳にひたしてパンを軟らかくする「パンがゆ」を作ったり、キャベツとニンジンのごまあえを作ったり、入所者の食事を用意する。

 コロナ禍は終わりが見えず、「調理師の仕事を本業にしては」とも言われ、紙芝居師を続けるべきか自問自答することが増えた。

「いつか自分で歩けたら また目も見えるようになるかな」

 そんな時、背を押してくれたのが、2010年に17歳で亡くなった長男の存在だった。

 長男は小学1年生だった19…

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