時にはスマホに敗北…想像以上に大変、奄美取材あるある

奄美・沖縄

外尾誠
【動画】写真家・常田守さんによる奄美の魅力と課題
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 世界自然遺産への「登録」が勧告された奄美大島鹿児島県)。楽しみ方の一つが、独特の生き物たちの撮影だ。毎年、多くのバードウォッチャーや植物愛好家らが訪れる。でも、自然相手なので思い通りにはいかないことも。「ほら、やっぱりね」。島を知る人なら、心当たりがあるかもしれない「あるある」体験。島で撮影を続ける記者が、一部を紹介する。

構えると出ない

 「絶対撮るぞ」と意気込むと、うまくいかない。一番人気のアマミノクロウサギがその典型。夜の林道を車でゆっくりと進みながら探すが、ファインダーをのぞいて準備しているうちは気配ゼロ。一息つこうと飲み物に手をのばすと、目の前にひょっこり現れる。

 美声で知られるアマミイシカワガエルも「今日は鳴かないな」と器材を片付けると、盛んに鳴き始める。カメラを再び構えると、また静かになる。粘るか、帰るか。悩んでいると、夜が明ける。気配が伝わるのかな、と思うが、もてあそばれている気もする。そんな生き物たちの撮影には「慣れ」と「相性」があるようだ……。

ハブだ!と警戒

 長いひもや棒が路上に落ちていると、(毒蛇の)ハブだ、と警戒してしまう。似たような経験をした人は多いはず。同じ鹿児島県の離島で、ハブがいない沖永良部島で茂みを歩いた時、いつもの癖で一脚で足元を確認しまくっていた。「いませんよ、ハブ。同じことをする奄美大島の人、多いけどね」とガイドさんに笑われた。ハブ対策のため、奄美の森では登山靴より長靴がメジャーだ。中には2万数千円もする「秘密兵器」も存在する。

 くっきりと撮影しようと、花の撮影ではマクロレンズをよく使う。色んな角度から時間をかけ、100枚以上撮ることも。最後に、データが消えた時の備えでスマートフォンで数枚撮影するが、そちらの方がきれいに撮れていることがある。少しせつなくなる。

たどりつかない

 多くの撮影は、約40年の経験を持つ島の自然写真家常田(つねだ)守さん(67)に同行してもらった。だが、この「師匠」との行程が、予定通りに進むことはまずない。「珍鳥がいるよ」「あそこの虫が面白いんだ」。道すがら、次々と被写体を思い出し、見つけ、撮影タイムに入るからだ。早朝に出発したのに、目的地に着いた時には夕方。暗すぎて、お目当ての花の撮影は断念、ということも多い。

 魅力的な生き物だらけの多様性と、それを知る常田さんの造詣(ぞうけい)の深さゆえのこと。直径数ミリの花から満天の星まで。その撮影に対応するために、はまっていく「沼」が奄美にはある。(外尾誠)

     ◇

 ほかお・まこと 1971年長崎市生まれ。99年に朝日新聞記者となり、鹿児島総局や西部本社社会部、東京本社国際報道グループ、熊本総局などで勤務。2014年4月~20年3月に奄美支局長を務め、その間、奄美群島地域通訳案内士にも合格した。現在は大牟田支局長(福岡県)。著書に「患者さんが教えてくれた 水俣病と原田正純先生」(フレーベル館)。