消費される身体を取り戻せ ピピロッティ・リストの表現

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田中ゑれ奈
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 ジェンダーや身体、自然をテーマにしたカラフルなビデオ作品で、映像表現の可能性に挑むピピロッティ・リスト(1962年、スイス生まれ)。京都・岡崎の京都国立近代美術館での大規模個展で、その約30年間の創作を概観できる。

 リストは巨大なスクリーンを使った没入型のビデオインスタレーションで、身体感覚を伴う映像体験を提示してきた。今展で、鑑賞者は靴を脱ぐよう指示される。床にはカーペットが敷かれ、座り込んだり大きなクッションに寝そべったりと、思い思いの体勢で空間を味わうことができる。

 「4階から穏やかさへ向かって」では、無作為に置かれたダブルベッドに仰向けに寝転がって天井からつるされたスクリーンを眺める。ライン川の水中で撮影された映像は、舞い上がる泥や気泡が拡大されて眼前に迫り、小さな水中生物になったような気分になる。

 コポコポという水音と穏やかな音楽にまぶたが重くなったところでふと、ここが美術館だったと思い出す。公の場で弛緩(しかん)する心地よさと気まずさを通して、リストは美術館と鑑賞者、公と私の関係性を再考するよう提案する。

 リストの作品の多くはフェミ…

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