暗中模索の五輪準備 福島県内の自治体は

荒海謙一 力丸祥子
[PR]

 新型コロナウイルスの感染拡大で、開幕まで2カ月半となった東京五輪への逆風が強まっている。招致の時に掲げた「復興五輪」はかすみ、全競技のトップを切ってソフトボールの開幕戦がある福島市や、選手らの事前合宿を受け入れる県内各地のホストタウンは先行きが見通せず、暗中模索の状況だ。

     ◇

 県内唯一の五輪会場になる福島市佐原の県営あづま球場では7月23日の開会式の前の21~22日にソフトボール、同28日に野球が予定されている。

 市は期間中の7月下旬、福島駅東側の「街なか広場」などで大型ビジョンによるパブリックビューイング(PV)や駅前広場での物販コーナー開設などを計画する。市の担当者は「感染状況が悪化すれば、人を集めるようなイベントが適切なのかどうか」と複雑な胸中を明かす。

 市民向けのチケット販売も悩みの種だ。延期前の昨年3月、市の広報紙でソフトボール280枚、野球84枚の抽選販売を知らせたところ、3千人を超す応募があり、野球は競争率が約20倍にもなった。延期決定で販売は中止になったが、今回は観客数の上限を巡る大会組織委員会などの方針がまだ決まらないため、販売計画も固まらない。担当者は「開催地であり、市民には夢や希望につながる感動を味わってほしいのだが……」と気をもむ。

 競技の開催で地域経済への波及効果も期待されたが、球場近くの土湯温泉観光協会には一般客からの期間中の予約問い合わせもほとんどなく、池田和也事務局長は「東京などでの緊急事態宣言もあって、五輪開催が半信半疑なのでは」と話す。当初は開催前に花火を上げるなどの「前夜祭」も検討したが、具体的には進んでいない。

 福島市の木幡浩市長は「五輪を機に町づくりを進化させたい思いもある。(五輪を)開催してほしいが、新型コロナとの関係で決まってゆくことだろう。その範囲で出来ることをやる」と話している。(荒海謙一)

     ◇

 英国の「復興『ありがとう』ホストタウン」になっている本宮市の担当者は「『やる』という灯火だけは掲げていたい」と祈るように話す。

 震災時に支援を受けた英国から中高生を迎え、市民と一緒に試合を観戦したり、日本文化や復興の状況を伝えたりする交流会を開く予定だった。だが、大会組織委員会などが海外からの観客の受け入れを断念し、計画通りに進めることは難しくなった。

 それでも、担当者は「本宮の子どもたちが英国との距離を縮め、海外で活躍する自分の人生をイメージする大切な機会でもある。オリンピックイヤー中には、交流の機会を作りたい」と話す。

 福島県内では本宮市南相馬市など11市町村が「復興『ありがとう』ホストタウン」として世界12カ国・地域の人たちと交流を予定していた。ほかに、選手らの事前合宿などを受け入れるホストタウンとして、福島市会津若松市など9市町村が準備を進めてきた。

 サモアのホストタウンであるいわき市は、ウエイトリフティングラグビーの合宿を受け入れる予定だ。ただ、ラグビーは五輪出場権がかかる大会さえ開かれず、代表が決まっていない状況だ。

 市の担当者は「変異株の広がりやワクチン接種の状況次第では、市民の側も選手たちとの交流に不安を抱くかもしれない。苦肉の策でオンライン交流となれば、いわきに来た意味が無くなってしまうし……」と頭を抱える。

 県オリンピック・パラリンピック推進室は、5月中に交通や観光の案内にあたる都市ボランティア向けの研修会を開く。現在、県内では約1600人が登録しているが、担当者は「(観客数の上限などの決定に応じて)スタッフの数や配置も見直さなくてはいけない」と困惑気味に話した。(力丸祥子)

県内の自治体のホストタウン

【ホストタウン】

福島市 スイスベトナム

会津若松市 タイ

郡山市 オランダ、ハンガリー

いわき市 サモア

二本松市 デンマーク

田村市 ネパール

大玉村 ペルー

南会津町 アルメニア

猪苗代町 ガーナ

【復興「ありがとう」ホストタウン】

白河市 カタール

喜多方市 米国

二本松市 クウェート

南相馬市 ジブチ、台湾、米国、韓国

伊達市 ガイアナ

本宮市 英国

北塩原村 台湾

川俣町 アルゼンチン

広野町 アルゼンチンインドネシア

楢葉町 アルゼンチンギリシャ

飯舘村 ラオス