役所職員「心苦しいです」ワクチン予約、全国各地で混乱

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 新型コロナウイルスの高齢者向けワクチン接種の電話予約をめぐり、混乱が続いている。NTT東日本は固定電話網がパンクするのを避けるため、10日に一部地域で通信を制限。この日予約を受け付けた自治体では、高齢者が役所に集まる一幕も。「いつ予約できるのか」との訴えが広がっている。

 「次の受け付けでは、今日やった操作の手間は省けないんですか」

 10日夕、接種の予約窓口となっている東京都渋谷区の施設に訪れた、今年65歳になる女性は不満をあらわにした。女性は予約が始まる午前9時の前からスマートフォンでネット予約できるように待機したが、画面が「フリーズ」。その間に十数分ほどで受け付けが終わった。「こんなに手間取るなら、年齢順に受付日を決めてもらった方がまし」

 同じく10日から受け付けが始まった東京都東久留米市では午前中でいっぱいに。電話がつながりにくい時間帯があり、30人以上が市役所にやってきたという。市内のコンサルティング業の男性(70)も予約開始時間の午前9時から30回以上電話したがつながらず、ネット予約に切り替えた。「ワクチンの接種は、災害時の危機にどう対応するかと似ている。民生委員や地域と連携して、どれぐらいの高齢者がネットを使えるのかなど地域にあった仕組みをつくってもよかったのではないか」と話した。市の担当者は「相談窓口は設けているが、『密』を防ぐため窓口での予約は受け付けていない。心苦しいです」。

 80歳以上に限定して10日から予約の受け付けを始めたのは神奈川県鎌倉市。だが市内の男性(83)は受け付け開始の午前9時から午後2時まで電話し続けたが、つながらなかった。「来週からは65歳以上の予約も始まる。さらにつながらなくなるのではと心配」

 千葉県習志野市では午前8時半の受け付けから30分後には予約枠が埋まった。市内に住む男性(77)は電話がつながらないまま、市のHPを見て「満員」と知った。「コロナでオンライン授業となっていて自宅にいる大学生の孫が予約を手伝ってくれると言っている。次回はネットと電話の2本立てでやってみようと思う」と話した。

 先行して予約を受け付けているところでも混乱は続いている。

 予約開始の3日午前9時に1分間で200万件のアクセスが集中し、ネットでも電話でも予約ができなくなった横浜市。予約は再開されたが、神奈川区に住む小笠芳輝さん(87)は「200回くらいかけてもつながらない。ひどすぎる」と言う。ネットが使えず、電話だけが頼りだが、いまもつながらない。「80歳以上の専用ダイヤルを用意するなど配慮してほしい。いつまで経っても予約できないんじゃないかと不安」と肩を落とした。

 東京都立川市で一人暮らしをする女性(83)はパソコンもスマホも持っておらず、予約を頼める人もいない。市が受け付けを始めた6日から電話し続けているが、10日もつながらなかった。「予約してくれと言われてかけたのに。本当につながるのか不安が募る」。繰り返しかけたため番号は暗記したが、しばらく電話をかける気にはなれない。「月末くらいにかけてみようかな。その間にコロナになっちゃったらしょうがない」

「自治体にあとはよろしく、では無理がある」

 こうした状況の中、各自治体も対応に追われる。さいたま市は、約30万人いる65歳以上の高齢者を五つの年齢層に分け、予約に必要な「接種券」の発送時期をずらした。最初に送ったのは85歳以上の約5万人。コールセンターに166回線を用意し、10日に予約の受け付けを開始。しかし、午前9時~午後3時に7万6782件の入電があり、回線がふさがった。市は「回線を増設するかを検討したい」という。電話がつながらない場合は、自動音声でそのまま待ってもらうか、かけ直してもらうよう呼びかけた。

 横須賀市は予約専用のウェブサイトとLINE、コールセンターの3種類で受け付けを開始したが、予約集中により、午前9時前から予約がしづらくなった。システムを構築した業者の設定ミスが原因といい、市の担当者は「サーバーがダウンしたわけではない」。順調に推移すれば数日で受け付けを終えられるとしている。

 神戸市は4月に75歳以上の受け付けを始めて以降、想定を超える申し込みが殺到。コールセンターの電話はほとんどつながらず、応答率は一時、数%にとどまった。市は段階的に回線数を増やすことにし、10日は当初より15回線多い135回線に。応答率は10%台だが、今月下旬までに300回線まで増やす計画だ。ネットでの予約もすでにサーバーを増強しており、利用しやすい状況になっているという。

 堺市も4月下旬以降、「つながりにくい」との苦情が寄せられている。10日からコールセンターを100回線に増やしたが、かかりにくい状況は続く。市の担当者は「市で予約を一手に引き受けるには元々対象者が多すぎたが、これほど集中するとは」。この日から、市内300カ所の医療機関でも個別接種の申し込みが始まり、「今後は分散してスムーズになるのではないか」と話した。

 予約の電話が集中するのは、期待が高い一方で現場への供給が足りないためとみられる。対象の高齢者は約3600万人いるのに対し、総接種回数は9日時点で約34万回だ。一方で菅義偉首相は、7月末までに終える方針を表明。自治体によっては計画の前倒しを迫られる可能性もある。10月初旬の終了を予定する広島市の阪谷幸春・保健医療担当局長は10日の会見で、「実施できる医療機関には限度がある。一方的に期限を設定されても難しい。(自治体に)『あとはよろしく』では無理がある」と国の方針に苦言を呈した。

このほか、岡山や愛知、九州の自治体でも同じように職員が対応に追われた。市役所に詰め寄る高齢者たちに「電話をかけ続けるしか…」と繰り返し頭を下げる場面も。

病院の回線パンク、救急隊の要請つながらず

 「何度電話をかけてもつなが…

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