第1回「政権を終わらせる」まるでアイドル、女3人組の選挙戦

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ミンスク=喜田尚
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女の顔をした革命 ベラルーシ①
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 1994年から「欧州最後の独裁者」と呼ばれるルカシェンコ大統領(66)の強権体制が続く旧ソ連ベラルーシが昨年8月の大統領選以来、同大統領に対する市民の退陣要求に揺れている。一連の経過の中で注目されたのが、さまざまな段階で活動をリードした女性たちの存在だ。政権は数カ月続いた大規模デモを力で抑え込み、さらに反政権派への締め付けを強める。当局は記者証発行を制限し、外国メディアの取材も困難になった。女性たちも、厳しい状況に置かれている。

 ベラルーシの首都ミンスクで昨年7月30日、10日後の大統領選に立候補しているスベトラーナ・チハノフスカヤ(38)は公園に集まった6万人の群衆に向かって「私に投票を」と訴えた。

 「私が大統領になれば、すべての政治犯を釈放する。憲法をもとに戻して大統領の任期制限を復活し、半年後に公正で独立した大統領選挙をやり直す。そして、あなた方が新しい大統領を選ぶのです!」

 大歓声が湧き起こった。

 このとき舞台でチハノフスカヤに寄り添ったベロニカ・ツェプカロは16日前、自宅で元駐米大使の夫ワレリー(56)と2人だけの家族会議を開いた。その日、中央選挙管理委員会はルカシェンコの有力な対立候補の1人とされたワレリーの失格を発表していた。間もなく治安機関がワレリーの拘束に踏み切るとの情報も、関係者を通じて伝わってきた。

 夫は子供2人を連れて直ちに出国し、妻は残って闘いを続ける。それがツェプカロ夫妻が下した結論だった。ワレリーが子供を連れて行くのは、当局が子供のことで母親のツェプカロに圧力をかけることができないようにするためだった。

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ミンスクで2020年7月30日、大統領選の選挙集会の壇上でポーズを決めるスベトラーナ・チハノフスカヤ(中央)とベロニカ・ツェプカロ(左)、マリヤ・コレスニコワ=ロイター

 当初、ルカシェンコに対抗できるとみられた候補はワレリーのほか、20年民間銀行の頭取を務めたビクトル・ババリコ(57)と人気ユーチューバー・ブロガーのセルゲイ・チハノフスキー(42)の3人。だが、チハノフスキーは候補者登録を拒まれたうえ5月に公務執行妨害容疑で拘束された。ババリコも翌月、突然資金洗浄の容疑をかけられ、陣営幹部の長男とともに拘束されていた。

 3人の関係者で選管が唯一立候補を認めたのが、チハノフスキーが自分の「代役」として名前を登録した妻のチハノフスカヤだった。元英語通訳で、結婚後は子育てに専念する主婦。ルカシェンコは、自分にとって最も危険が少ないと思われたチハノフスカヤを立候補させ、「選択肢のない選挙」という国際批判をかわす狙いだったと見られる。

ベラルーシ出身のノーベル文学賞受賞作家スベトラーナ・アレクシエービッチの代表作にちなみ、「女の顔をした革命」とも呼ばれる同国の抗議活動。現地からの報告を全5回でお伝えします。

15分で終わった話し合い

 ツェプカロ夫妻は候補者審査…

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