第3回「僕が行く」が最期の言葉に ベレー帽に火、部隊と決別

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ミンスク=喜田尚
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女の顔をした革命 ベラルーシ③
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 元教師のエレーナ・ボンダレンコ(56)は昨年11月12日の午前3時半、自宅アパートの呼び鈴で目を覚ました。同居する長男ロマン(当時31)の姿はなかった。

 ドアを開けると若い女性2人と男性が立っていた。

 「お母さんですね。驚かないで。ロマンは今病院で手術を受けています」

 3人はそう言ってボンダレンコに救急病院の連絡先を渡した。深刻な事態が起きていることは分かった。

 午後まで続いた手術の合間、やっと担当医に会うことができた。医師は疲れた様子で「息子さんは生き延びられるかどうかの瀬戸際にいます」と告げた。脳の重要な部分に繰り返し集中的な打撃を受け、命を取り留めても立つことも話すこともできないかもしれない、とも話した。「でも、私たちは全力を尽くしています」

 ロマンはその日夕、帰らぬ人となった。

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ミンスクの自宅で3月、長男ロマンの木彫りの遺影を持つエレーナ・ボンダレンコ。今もロマンの行動に共鳴した人々からさまざまな哀悼のオブジェが送られてくる=喜田尚撮影

暴行を受けていたのはロマンだった

 同じ日、携帯電話で撮影されたとみられる前夜の映像がSNSや独立系インターネットメディアで繰り返し伝えられていた。高層住宅に囲まれた小さな広場。街灯の光が届かず分かりにくいが、1人の男性が目出し帽で顔を隠した複数の男たちから殴る、けるの暴行を受けている。背後で「その人を離して!」と泣き叫ぶ女性の声が何度も響いた。

ベラルーシ出身のノーベル文学賞受賞作家スベトラーナ・アレクシエービッチの代表作にちなみ、「女の顔をした革命」とも呼ばれる同国の抗議活動。現地からの報告を全5回でお伝えします。3回目では、1人の青年の死が社会を大きく動かす様子を描きます。

 暴行を受けていたのはロマン…

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