スポーツの男女格差「変える」 現役選手大滝さんの挑戦

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 スポーツにはなお、男女格差が色濃く残るといわれています。現役の女子サッカー選手である大滝麻未(あみ)さん(31)は、「待っていてもなにも起こらない。自分たちでスポーツ界を変えよう」と動き出し、試行錯誤しながらジェンダーに関する課題など、様々な発信をしています。

 大滝さんは5月7日に妊娠を発表し、出産後に現役復帰する考えを表明。「この選択が当たり前になり、女子アスリートが女性としてのライフステージと向かい合いながら、大好きなスポーツを続けられる社会になっていくことに、少しでも貢献出来たら嬉(うれ)しいです」とコメントしました。

 朝日新聞では大滝さんらを招き、「Think Gender 東京五輪にできること」と題して、5月15日にフォーラムを開いてオンライン配信します。

 第1部では、大会組織委員会の橋本聖子会長を招き、東京オリンピックパラリンピックやスポーツ界のジェンダーに関する課題や、開催が危ぶまれている大会について、議論します。

 第2部「スポーツのジェンダーを語り合う」では、大会が掲げる「多様性と調和」という理念をどう形にしていくかについて、3人の方に話し合ってもらいます。大滝さんは、組織委のスポーツディレクターを務める小谷実可子さん、明治大学教授の高峰修さん(スポーツ社会学、ジェンダー論)と一緒に登場していただきます。

 フォーラムを前に、大滝さんが取り組んでいる活動やその思いを紹介します。

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 2年前、選手仲間に呼びかけて一般社団法人「なでしこケア」を設立した。女子サッカーや女性アスリートの価値や地位の向上を目指し、ほかの選手と共にハラスメント問題など社会の課題について考える活動をしている。

 活動を始めて強く感じているのは、自身を含め、問題意識を持たないことや行動に移せないことを変える難しさだ。

 「問題意識を持つ人は集まってくるし、どう行動を起こすかという発想が(その集まりから)出てくる。持たない人への働きかけには時間がかかるし、どう向き合っていくかは難しい。自分や競技の将来への考えや思いはあるけど、悩んでいても行動に移せない人が多いことが気になる。サッカー選手の発言なんて、と自分の価値を過小評価する人が多い。まずはそこから変えていきたい」

 国際サッカー連盟(FIFA)が運営し、スポーツの経営や法律を学ぶ修士課程「FIFAマスター」で学んだ。そこで強烈な体験をし、発信する大切さと同時にその難しさも知った。

 「FIFAマスターでは、常に意見を求められる日々だった。ある講義で講師が女性差別的な発言をして、その場で男子学生が指摘したことがあった。私も、その指摘で初めて差別的だったことに気づかされて、発言力とリテラシーの違いを思い知った。日本では、女性アスリートの側に、知識もないし、発信できない、というブレーキを感じる。変なことをいって炎上するかもしれないと」

 「欧州では、選手自身がなにをすべきかを考えている。注目されるから、責任を果たさないといけない。日本と大きく違うのは自身の価値をよく理解している点です」

 それらの体験に突き動かされ、自身を含め、日本の女子選手の内側を変えることに力を注ぎ続けている。

 「2011年にワールドカップで優勝したあと、女子サッカーは、なぜブームで終わってしまうのかを考えてきた。社会を変えるために、まず女子スポーツと選手の価値や地位を向上させようと考えた。日本では特に、社会を変化させるには女性自身が変わらないといけない部分が強いと感じます」

 9月には国内初の女子プロリーグ「WEリーグ」が始まる。

 「女子サッカーにしかない価値がある。自分らしく輝くことを体現し、女性を勇気づける力がある。それも選手がプロとして自立して、発信していかないと外には伝わらない。選手側の意識改革を進めていくつもりです」潮智史

 おおたき・あみ 1989年生まれ、神奈川県出身。ジェフ千葉レディース所属のFW。2012年に早大から仏1部のリヨンに加入し、欧州チャンピオンズリーグ優勝に貢献。15年に引退し、大学院のFIFAマスターに進学。17年に現役復帰、18年から日本でプレー。日本代表通算3試合出場。