イヌワシの森、あえて木を切る理由は 3年ぶり繁殖成功

石倉徹也
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 国の天然記念物絶滅危惧種のイヌワシは、翼を広げると2メートル近くになる大型の猛禽(もうきん)類だ。元々ノウサギなどの獲物を見つけやすい草地を好む。林業の衰退で木の伐採が進まずに密な木々が増え、狩りをしにくくなったことで近年は生息数が減少。国内で500羽と推計されている。

 狩り場を増やすため、あえて木を伐採する。そんな取り組みが進むのが、つがい1組が30年近く生息を続ける群馬県みなかみ町の「赤谷(あかや)の森」だ。協力するのは林野庁と地元住民、日本自然保護協会の3者。2015年以降、スギの人工林を切り、これまで東京ドームの広さに相当する4・6ヘクタールを草地に戻した。

 すみかとする1万ヘクタールの森に比べれば、わずかな面積だが、上空で獲物を探したり、羽をすぼめて急降下したりする姿を見る頻度は5年間で3倍以上に増加。16年には、繁殖が7年ぶりに確認されるなど効果も出てきたようだ。昨夏は3年ぶりの子育てにも成功し、巣立ったオスは、地元の小学生により「ミライ」と名付けられた。繁殖の成功は3回を数える。

 協会生物多様性保全部長の出島誠一さん(46)は、伐採地を点在させず、1カ所に集中させたことで、狩りの効率が高まった可能性があると指摘。「わずかな伐採でも繁殖につながる成果が出た。この取り組みを全国に広げたい」と手応えを語る。長野県でも、同様の取り組みが今年始まるそうだ。

 ただ、イヌワシが生息する山間部で風力発電所の建設が進むことが悩みの種だ。再生可能エネルギーとして期待が高まる一方で、イヌワシの衝突や狩り場の減少が指摘される。出島さんは「生態系への影響が懸念されている」と話す。石倉徹也