やられたら笑かしたる 半沢直樹脚本家の「おちょやん」

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土井恵里奈
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 やられたら笑かしたる――。「やられたらやり返す」でおなじみのあのドラマの脚本家が、朝ドラで描いたのは泣きと笑いの世界だった。親にも夫にも裏切られる苦難の人生と、その先にある許しと救いとは。「おちょやん」の脚本家八津(やつ)弘幸さんに聞いた。

このドラマでチャレンジしたことは

 ――おちょやんは、女性の一代記という意味では王道です。ただ、主人公のよりどころが、血のつながった家族ではない時点で今までの朝ドラとは違う。

 そのために、(肉親の)テルヲという存在を描きました。(くそおやじだと)物議をかもして、すごい反響でしたけど。ともすれば、僕はいい人に描いてしまう。でも今回はそうしないように気をつけた。チャレンジングでした。

なぜテルヲ?

 千代にとっての重し、足かせです。描くべきは、浪花千栄子をモデルにした女性が、苦しい人生のなかでいかにして皆から愛される存在になったのかということ。テルヲをきれいごとで描くことはできませんでした。

 それに、世のなか完璧な人ばかりじゃない。時にはどうしようもない人も、間違ったことをしてしまう人もいる。そんな時、いかに乗り越えるか、やり直すか、許せるか。描きたかったのはそこです。

 最近は、SNSなどですぐに批判が起きてとげとげしい。それが僕は嫌なんです。人を許す優しさを、みんなで持てたらいいなと思っています。

 (千代の幼なじみで離婚した夫の)一平なんかもそう。「朝ドラ史上最低の父親と最低の夫」を更新したんじゃないですか。千代と一平は(親に恵まれないなどの境遇が)似ています。一平だけは、千代のことをわかってあげられる。

 (一平の不倫は)魔が差したというと、全国の女性を敵に回すことになりそうですね。ただ、一平は婚姻関係が終わっても、どこかでずっと千代を必要としていた。お互いにそうでしたね。

 人間関係って、竹を割ったようにはいきません。それでも生きていかないといけない。そんな思いで書いた気がします。

継母の栗子が花かごを渡すシーンは驚きでした。1人の人物の多面性を描けたのは、放送期間の長い朝ドラだからこそでは

 ――そうですね。あれはやっぱり朝ドラならではですね。

 再生というのも大きなテーマ…

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