戻れぬ故郷、見つけた仕事はクルーズ船 だまされて転々

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平山亜理
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 実習先から失踪したベトナム人技能実習生たちがたどりつく「失踪村」が北関東には点在している。その一つと言われる埼玉県上里町のアパートで、居候生活を続ける男性ブー・バン・ズンさん(36)は2018年8月に来日したが、給料の安さや待遇の悪さから1年半で逃げ出した。

 ベトナム北部イェンバイの出身。ジャスミンティーなどを作る茶畑農家の両親の間に、兄と姉の3人きょうだいの末っ子として生まれた。ベトナムでは実家の近くで、妻と11歳の息子、6歳の娘と暮らしていた。いとこが経営する鉄工所で働いていたが、独立資金をためようと来日した。

拡大する写真・図版「失踪村」で暮らすブー・バン・ズンさん=2021年2月11日、埼玉県上里町、内田光撮影

 かつてマレーシアに出稼ぎに行った際、約束した月給の4分の1しかもらえなかった経験があり、父親は「これ以上、苦労することはない」と反対したが、押し切った。銀行から借金して、送り出し機関などに約100万円の手数料を支払った。

 実習先は富山県の建設会社。解体の仕事だった。来日前、「月給は9万円、残業があれば15万円」と社長から聞いていたが、残業はなかった。最低限の食費として3万円だけを残し、6万円を家族に送金する生活を続けた。

 ある日の仕事中、足に釘が刺さった。病院に連れて行ってほしいと上司に頼んだが、「監理団体に頼めば?」と言われただけだった。給料も安く、けがをしても気にかけてくれるわけではない。見捨てられたと感じ、20年2月に逃げ出した。借金はまだ30万円ほど残っていた。

 「8万円を払えば、いい仕事を紹介する」。逃げ出した直後、SNSで知り合ったベトナム人に紹介された、ダリオと名乗るブラジル人はそう持ちかけてきた。神奈川県の建設現場で、日本人の補助をする10日ほどの仕事。日給は1万1千円という。宿は無料で用意するし、色々な手当も出るという好条件だった。

借金を返すため、実習先を逃げ出してからも、仕事を転々とするズンさん。新型コロナの集団感染が起きたダイヤモンド・プリンセス号でも「命がけ」で働くことになります。

 ケーブルなどの資材を運び…

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