医療的ケア児、通園受け入れへ 長門市立の保育園

寺島笑花
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 たんの吸引や人工呼吸器などの医療的なケアが日常的に必要な2歳の女児が11日、山口県長門市の市立保育園に初めて登園した。市が受け入れに動き出した。今後市は、緊急時の対応などを定め、園内を改修。トイレやシャワー室が付いた専用の部屋を設置し、9月ごろから通園が可能となる見込みだ。

 市立みのり保育園を訪れたのは、坂田文乃ちゃん。「チャージ症候群」という難病をもつ。目や耳、心臓や呼吸器などに障害がある。24時間の人工呼吸器のほか、チューブを通じて栄養をとる経管栄養、定期的なたんの吸引が必要な「医療的ケア児」だ。経管栄養やたん吸引は医療行為とされ、行うのは家族や医師、看護師に限られている。

 父親の繁洋さん(40)と母親の真名美さん(36)は共働きだったが、繁洋さんが仕事を辞め、現在は自宅で文乃ちゃんのケアを行っている。受け入れ先がなく、夫が復職できない現状を市に相談して、今回の登園が実現した。

 医療的ケア児の受け入れにあたり、市内の公立保育園の保育士2人が昨年12月、特定の人にのみ医療行為を行える「認定特定行為業務従事者」の研修を修了した。また、市は今年4月から、園で働く看護師2人を雇用。市職員と保育士、看護師が坂田さんの自宅を訪れ、文乃ちゃんの病気やケアについて情報を共有した。真名美さんから教えを受けた看護師が、文乃ちゃんに経管栄養をした。

 医療的ケア児は2019年5月時点で、県内に150人いる。県障害者支援課によると、公立の小中学校に通うケア児は保護者が付き添っている場合が多いという。

 繁洋さんは「いままでは障害があることで、園に通えなかった。娘には、いろんな人と触れ合って外の世界を知ってほしい。園の子どもたちにも文乃のことを知ってもらえたら」と話している。

 市の担当者によると、みのり保育園の保育士を対象に、継続して研修を実施していく予定という。

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 医療的ケア児をもつ家族同士の交流が、山口県内で始まっている。今年2、3月にはオンライン上で初めて交流会が開かれ、延べ12世帯の家族や医師、市職員らが参加した。

 交流会では進学の不安や夜間のケアのほか、車で移動する際に必要な運転手以外の支援者についての悩みも話し合われた。自治体のサポート体制が整っておらず、医療的ケア児が家から外に出る機会がなかなかもてないとの声もあった。

 医療的ケア児は、2016年に児童福祉法に初めて明記され、支援は自治体の努力義務とされた。県は19年5月に初めて、医療的ケア児をもつ保護者150人を対象に実態把握のためのアンケートを実施。県障害者支援課によると、回答があった98人のうち49%が医療的ケア児は日中は主に自宅で過ごし(複数回答あり)、保護者の約46%が「就労したいが介護のためにできない」と答えた。「悩みや不安を誰に相談していいか分からない」「外出もままならず、社会とのつながりが絶たれたような気になる」といった意見もあった。

 医療的ケア児を受け入れている下関市社会福祉法人「じねんじょ」の小寺美帆さんは「ケアが必要な子どもが注目され始めたのは最近。地域によって支援体制にばらつきがある」と指摘している。(寺島笑花)