「おちょやん」になぞの方言 「おはようおかえり」とは

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土井恵里奈

拡大する写真・図版11日の放送から。この日の放送では、ようやく道頓堀に帰ってきた千代を、みつえが「おかえり」と迎えた。12日放送の「おはようおかえり」は、千代を送り出す場面で使われた

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 機は熟したのか――。この3人のスリーショットを見られる日が来るとは。12日放送の朝ドラ「おちょやん」では、主人公の千代(杉咲花)が、別れた一平(成田凌)と灯子(小西はる)に会いに行く展開が描かれた。

 養子に迎え入れためいの春子(毎田暖乃〈のの〉)を連れて、2年ぶりに道頓堀へ帰ってきた千代。シズ(篠原涼子)やみつえ(東野絢香)たちと再会し、鶴亀新喜劇の団員も岡福うどんに押し寄せる。しかし、そこには当然、一平の姿はなく……。

 団員らと千代は楽しいひとときを過ごすが、肝心なことはだれも切り出さないままお開きに。一平の喜劇に、果たして千代は出演するのか。答えを出せないでいる千代に、寛治(前田旺志郎)は帰り際、一平が身を削る思いで脚本を書いたと伝える。「子どものため、灯子さんのため、鶴亀新喜劇のため。ほんできっと、千代さんのために」

 その夜、千代は考える。自分だけでなく、春子のために、今できることは何か。一晩悩み、ついに行動を起こす。

 「ちょっことヤボ用だす」。この日、行き先を告げないまま、岡福に春子を預けて出かける千代。みつえは一言、こう言って送り出す。「おはようおかえり」

 千代の向かった先は、一平と灯子の暮らす家だった。並ぶ2人を見つめ、千代は切り出す。「よし。だんない。大丈夫や」。吹っ切れた表情を見せた。

 そして、一平の舞台への出演を引き受けることにした、と決意を伝える。別れた2人が同じ舞台に立つなんて。かつて一平が「万に一つもありえませんわ。もしそないなことになったら、喜劇やな」と言っていた夢物語が実現した瞬間だった。

「おはようおかえり」って?

「おはようおかえり」とは?

 おちょやんには、古い関西弁がたくさん登場する。みつえが千代にかけた言葉「おはようおかえり」もその一つ。

 意味は、朝のあいさつの「おはよう」ではなく、「ただいま」への返しの「おかえり」でもない。そもそも、これから行く相手に対して、なぜおかえりなのか。

 同志社女子大学の中井精一教授(社会言語学)によると、「無事に終わって、帰ってきてくれることを待っている」というニュアンスがある。大阪の街中の商家などで使われてきた言葉らしく、細やかな気遣いがにじむ。「いろんなことがあっても落ち着くところに落ち着いて、無事に帰ってきてやという願いが込められています」

 しかし、最近はめっきり使われなくなった。「地域差はありますが、言葉を知っている世代は50代以上、使ったことがあるのは70代以上が多い」

 おはようおかえりがそこかしこで聞かれた時代は、携帯電話もGPSも一般的ではなかった。

 それが今ではどこにいるのかすぐに分かり、気をもむ場面は減った。行く道を案ずる言葉は、出る幕も減ったということか。

■慈悲の心…

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