イニエスタ「生涯神戸」の影響力 楽天への恩恵は無限大

小俣勇貴
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 「サッカー選手としてのキャリアを、ここで最後まで続けたい」

 サッカーのJ1ヴィッセル神戸と、2023年までの契約延長に合意した元スペイン代表アンドレス・イニエスタの言葉だ。日本での現役引退を念頭に置いた――という明言にほかならない。

 まさに、相思相愛の契約更新だった。「2025年」という異例の長期契約をも視野に、交渉が進んでいたふしがある。

 それもそのはず。世界屈指のスターの貢献はピッチ内にとどまらない。来日した18年の本拠の観客総数は、前年比約5万7千人増の36万7716人に。この年度は営業収益も、「イニエスタ効果」でスポンサー収入が約28億5千万円増えて、96・6億円(前年度比44・2億円増)を計上。2位の浦和に20億円以上の差をつけるリーグ過去最高額を更新した。さらに、翌19年度には営業収益が114・4億円と100億円の大台をも突破した。

 影響力も桁違いだ。神戸のインスタグラム公式アカウントのフォロワー数は約24万人。スポーツ界で発信力のある女子テニス世界ランキング1位経験者の大坂なおみが約223万人であるのに対し、イニエスタのアカウントは3600万人超。ツイッターのフォロワーも2500万超を数える。

 イニエスタが何かを発信するたびに、「ヴィッセル神戸」の名称は世界中のファンに広がる。親会社、楽天のアジア・欧州戦略に多大な恩恵をもたらすキーマンでもあるのだ。

 契約更新にあたり、三木谷浩史会長は会見で、「(条件などの)経済面で歩み寄っていただいた」と明らかにした。前日に「重要な記者会見」と大々的に告知し、地元・神戸から遠く離れた東京都内の高級ホテルで会見を開くなど、派手な演出で敬意を示した。それがかえって、クラブの「イニエスタ頼み」の印象を色濃くした。

 その大黒柱も、この日で37歳。契約を更新したとはいえ、ユニホームを脱ぐ日は遠くない。「生涯神戸」の宣言はファンにとって願ってもないことだが、クラブはピッチを去る日に備えておく必要もある。イニエスタが与えてくれたものを根付かせる方策は探っているのか――。そして、スターが注目されるなかで注力できなかった、生え抜き選手の育成やサポーターのつなぎとめなど、港町のクラブは“アフター・イニエスタ”にも、もっと目を向けるべきではないか。小俣勇貴