奄美・徳之島 改めて自然保護を誓う 「継承が使命」

奄美通信員・神田和明、白石昌幸 外尾誠
[PR]

 【鹿児島】島の自然が世界に発信される――。待ちわびた世界自然遺産への「登録」が10日に勧告され、奄美・徳之島に喜びが広がった。延期勧告の曲折をへて、世界遺産の意味を見つめ直した関係者たちは、さらなる自然保護の取り組みを誓う。

     ◇

 ユネスコ国連教育科学文化機関)の世界自然遺産への登録勧告から一夜明けた11日午前、奄美大島の5市町村長がそろって記者会見した。奄美市の朝山毅市長は「先人が残してくれた遺産を保護、保全しながら末永く継承していくことが我々の使命。指摘された課題に関係機関と取り組み、確実な登録に向け頑張りたい」と語った。

 塩田康一知事は10日夜に県庁で会見を開き、「世界遺産に登録がふさわしいと評価されたことは大変喜ばしい」と笑顔を見せた。

 2018年にユネスコの諮問機関IUCN(国際自然保護連合)から「登録延期」の勧告があり、外来種や盗採掘の対策などの課題が指摘された。再挑戦での登録勧告に「これまでの関係者の努力がこの結果を招いた」とねぎらった。観光業への影響には「特色と魅力のある地域。文化・伝統・食など地域資源をあらためて発掘し、地元の皆さんと観光資源として磨き上げたい」と期待を寄せた。

 奄美市名瀬の自然写真家、常田守さん(67)は「素直に感謝しかない。これまで自然遺産登録に向けて関わってきた人たちの顔が浮かんできた」とほっとした表情を見せた。一方で「大きな責任を背負うことになる。自然を今のまま残していきたい。登録が最終目的ではない」と話した。

 奄美市住用町の「黒潮の森マングローブパーク」の寿浩義支配人(63)は「奄美が世界に向けて発信される」と喜んだ。島を訪れる人に「世界遺産としての奄美はもちろん、身近な奄美も感じてリピーターになってほしい」と期待する。「これで終わりではない。いかに自然を守り保っていくか、島民が考えなければならない」と話した。(奄美通信員・神田和明、白石昌幸)

     ◇

 徳之島在住で、県の希少野生動植物保護推進員を長く務めている池村茂さん(64)は「世界的に『すごい島』として認められる」と喜び、保護に向けた動きの広がりを期待する。

 「自然の中で暮らしたい」と、関西から生まれ故郷の島に20歳ごろにUターン。幼少から遊び場だった海のサンゴを皮切りに、保護活動の対象を森にも広げてきた。地元の環境NPO「徳之島虹の会」の理事も務め、週に何度も森に入り、希少種保護のパトロールを続けている。

 遺産候補の森は、奄美大島1万1640ヘクタール、沖縄本島北部7721ヘクタール、西表島2万822ヘクタール。徳之島は2515ヘクタールと最小だが、固有種絶滅危惧種の数ではひけをとらない。

 島名を冠した国の天然記念物トクノシマトゲネズミに希少植物のトクノシマエビネやトクノシマカンアオイ、種の保存法による国内希少野生動植物種に指定されたオビトカゲモドキ。「コンパクトで近づきやすい自然に、独特の生き物がたくさんいる。いつもドキドキする出会いがある」。そう語る池村さんは愛用のカメラで生き物の撮影も続ける。写真を見てもらい、島の子どもに地元の魅力を知ってもらうためだ。

 一方で、密猟や交通事故による希少種の被害、ゴミのポイ捨ては後を絶たない。森に入った猫が国の特別天然記念物アマミノクロウサギなどを襲う問題もある。虹の会はそうした猫の捕獲事業を担うが、捕まえた猫は専用施設で飼い主を探しながら保護するため、池村さんはワナのチェックにも奔走している。

 遺産登録が実現すれば、保護に向け、島民が同じ方向をむけるようになる、と期待する。島の自然は魅力たっぷりだが「森も海も以前はもっとすごかった。遺産化は通過点。みんなの力で大切な島と自然を守り続けられるようにしたい」。(外尾誠)