栃木知事選巡り、知事の次男ら略式起訴 議会で厳しい声

平賀拓史 中村尚徳、池田拓哉、津布楽洋一
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 「我が母校の式典に、来賓として知事をお迎えできるよう、ご支援とご協力をお願いします」――。昨年の知事選告示前、公職選挙法に違反して福田富一知事(67)への投票を呼びかける法定外文書を送ったなどとして、宇都宮市の元市議会議長や元市議ら3人が11日、略式起訴された。市議らからは、「うかつだったでは済まされない」など、厳しい声があがった。

 宇都宮区検は公選法違反(法定外文書頒布と事前運動)の罪で、宇都宮市議会の桜井啓一・元議長(59)、福田陽(あきら)・元市議(37)、福田知事陣営の星剛・元運動員(57)を略式起訴した。福田元市議は福田知事の次男。同じ容疑で書類送検された他の3人は「必要な証拠を集められなかった」として不起訴処分とした。

 桜井元議長ら3人は共謀し、告示直前の昨年10月25日、県立宇都宮工業高校の野球部OB会員ら12人に、法定外の選挙運動文書を封書で発送したとされる。

 捜査関係者などによると、桜井元議長はOB会の副会長を務めていた。文書では同校出身の福田知事について「野球部の施設整備等に格別なご理解とご支援を賜っており、OB会としても、母校の誉れでもある知事を万全の態勢でご支援すべく、ここに推薦をしたい」などと知事選への支援を要請。「2023年には100周年を迎える我が母校の式典に、来賓として知事をお迎えできるよう、皆様方のご支援とご協力をお願いします」などとも書かれていたという。

 宇都宮市議会では、2013年の参院選で候補者への投票を呼びかける文書を送ったとして、公選法違反(法定外文書頒布)の罪に問われた市議が略式起訴され、公民権停止5年(のち1年に短縮)の処分を受けている。(平賀拓史)

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 宇都宮市議会は2月、公選法違反容疑で書類送検された桜井元議長と福田元市議が市議会の倫理に違反した疑いがあるとして、倫理委員会を設置した。倫理委での審査を請求した一人、今井恭男市議=市民連合=は、2人の略式起訴について「処分は当然」と話す。

 桜井元議長は、過去に議会事務局職員に商品券を贈ったとして公選法違反容疑で書類送検されたことがある。不起訴処分となったものの、市議会倫理委は市議の倫理基準に違反していると認定。この件を踏まえ今井市議は「今回は、うかつだったでは済まされない。議員辞職しても、市民への説明責任を果たすべきではないか」と求めた。

 2人が所属していた市議会最大会派・自民党議員会の小林紀夫会長は「(法定外とされた)文書の中身を把握しておらずコメントできる立場にない」としつつ、「残念としか言いようがない。市民に対して襟を正さなければならない」と語った。

 倫理委は13日、審査をどう進めていくかを協議するが、今井市議は「2人の議員辞職で審査の対象者がいなくなり、結論を出せないまま終わることになるのではないか。議会としての浄化作用を市民に示せる場だっただけに、非常に残念だ」と話した。

 自民党県連副幹事長の渡辺幸子県議は「党として重く受け止めなければならない」。一方で「桜井氏は経験豊富で、福田氏はまだ若い。2人には市政に何らかの立場で関わり続けてほしい」とも述べた。

 自身の次男が絡む事件となった福田知事は11日夕、県庁で報道陣の取材に応じ、「知事選の公平性を阻害し、有権者の信頼を損ねてしまったことを心からおわび申し上げたい」と謝罪した。次男の福田元市議からは、メールで略式起訴の報告があったという。

 福田知事は「候補者の後援会活動に関する文書には、責任者が必ず目を通すことを徹底して選挙をやらないと、こういったことがまた起こると自覚をした」と話した。福田元市議の今後については「本人も負うことになるかもしれない責めを果たしてから考えていくだろう。その際は相談に乗っていきたい」と語った。(中村尚徳、池田拓哉、津布楽洋一)

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公職選挙法129条と142条〉 129条では「選挙運動は、候補者の届け出のあった日から当該選挙の期日の前日まででなければ、することができない」と規定。3人が、法定外文書とされた封書を送ったとされるのは、福田富一知事が立候補を届け出た昨年10月29日の告示日より前の25日だった。また、142条第1項では、都道府県知事選で配布できる文書形式ははがきと2種類のビラに限定し、枚数の上限も細かく規定している。