信仰対象それとも文化財 住民が守り伝えるお地蔵様

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■飯島可琳の観仏抄:2

 神仏習合という伝統的な宗教観を持つ日本人にとって、明治維新での神仏分離令はおそらく驚きであったことでしょう。新政府が意図していたのは、天皇の権威を高めるために神道から仏教色を取り除くことでした。しかし、これが仏教への激しい弾圧、いわゆる「廃仏毀釈(はいぶつきしゃく)」を招いてしまいます。残念なことに、信仰の対象である「宗教財」として長く守られてきた仏像のなかには、失われてしまったものも多くありました。これをきっかけに導入されたのが「文化財」という価値観です。

 先日、奈良県宇陀市の安産寺にお参りしました。お寺は中村地区の方々によって管理されており、地区の集会所にもなっています。すぐ東は三重県で、宇陀川に沿うこの地域は、かつてお伊勢参りの街道として栄えていたそうです。

 本尊の地蔵菩薩(ぼさつ)像(国重要文化財)は、平安時代前期の像です。「漣波式衣文(れんぱしきえもん)」という大波の間に小波が2条入る衣の表現が特徴的です。元は室生寺におられたそうで、寸法の合う光背が同寺にのこされています。現在の地に移ってからは、安産を守る「子安地蔵」として親しまれてきました。拝観者の立ち位置や天気、明かりによってお地蔵様の表情が異なって見えるのも魅力です。収蔵庫出口の階段を下りたあたりで振りかえったときのお顔は、特にあどけなく、優しいように思われます。

 地蔵菩薩像には博物館に保管…

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