ブログは「差別による人格権侵害」 発信者に賠償命令

編集委員・北野隆一
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 在日コリアンを親に持つ神奈川県在住の大学生中根寧生(ねお)さん(18)が、ネット上の差別的な投稿で人格権を侵害されたとして発信者に損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が12日、東京高裁であった。白井幸夫裁判長(相沢哲裁判長代読)は原告の請求を認めた一審・横浜地裁川崎支部判決を支持し「投稿は著しく差別的、侮蔑的で、読者に差別的言動をあおるもの。個人の尊厳や人格を損ない、きわめて悪質」と認定。発信者の大分市の男性(68)に130万円の支払いを命じた。

 判決によると2018年1月、新聞やネットに掲載された若者が平和を訴えるイベントの記事に、当時中学3年だった中根さんの実名が入っていた。男性は同月、中国や韓国・朝鮮の排除を題名にとった匿名のブログに、中根さんの出自などを中傷する文章を投稿した。

 中根さん側は通信業者に情報開示を請求し、発信者を特定。同年7月に侮辱の疑いで男性を川崎署に告訴した。川崎簡裁は同12月、侮辱罪で科料9千円の略式命令を出した。

 中根さんは19年3月、ブログによる①名誉毀損(きそん)②著しい侮辱③差別による人格権侵害があったとして、男性を相手取り300万円の賠償を求めて提訴。男性側は「反日的な在日韓国・朝鮮人に反論する意図で書いた。差別的な意識を助長する目的ではない」と主張した。地裁川崎支部の飯塚宏裁判長は20年5月26日の一審判決で②③を認め、男性に91万円の支払いを命じた。

 男性側は控訴しなかったが、中根さん側は一審が認めなかった名誉毀損の認定も求めて控訴した。高裁判決はブログが「憲法ヘイトスピーチ解消法(対策法)、人種差別撤廃条約違反の人種差別にあたる」とした一審判決を支持したが、名誉毀損の成立は引き続き否定。そのうえで、「(中根さんは)当時、中学3年という多感な時期にあり、精神的苦痛は多大で成長に悪影響を及ぼしかねなかった」として、賠償額を増額した。

 判決後の記者会見で中根さんは「匿名の卑怯(ひきょう)な差別を許さず、前に出て発信することで、差別的攻撃を受けている人の勇気や力になりたい」と実名を公表。代理人の師岡康子弁護士は「差別を人格権侵害と認定し、差別されず平穏に生活する権利を認めた画期的な判決」と評価した。(編集委員・北野隆一