勝武士さんの死から1年 土俵盛り上げるのが一番の弔い

松本龍三郎
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 大相撲の三段目力士・勝武士(本名・末武清孝)さんが、新型コロナウイルスとの闘病の末、28歳で亡くなってから、13日で1年となる。

 当時の東京都は、1度目の緊急事態宣言下。5月4日には、夏場所の中止が発表されたばかりだった。20代以下が死亡するのは国内初の事例とされ、主要なプロスポーツ選手の悲報は海外でも大きく報じられた。

 日本相撲協会はその後、7月場所に向けて予防対策のガイドラインを策定し、稽古から部屋での生活に至るまで、協会員に厳しい制限を課した。2度目の緊急事態宣言が発出されていた今年の初場所前からは、力士や親方、裏方ら協会員約900人を対象に新型コロナウイルスのPCR検査を行う徹底ぶりだ。

 いくつかの部屋ではクラスター(感染者集団)が発生し、コロナによる休場者が大量に出た場所もあった。今年はじめ、横綱白鵬の感染が判明した際には角界内外に驚きが広がった。それでも、なんとか場所開催は続いている。

 幸い、ここまで新たな犠牲者は出ていない。だが、ほとんどの協会員が息苦しい生活を耐え忍ぶなか、ガイドライン違反も散見された。幕内阿炎(現在幕下)が外出自粛期間中に「夜の店」へ通ったことが発覚して引退騒動に発展し、先代の時津風親方(元幕内時津海)は、度重なる違反で協会を去った。

 今場所前には幕内竜電に違反があったとして、全休が発表された。同じ高田川部屋の勝武士さんは付け人を務め、本当の兄のように慕っていただけに、残念でならない。今後、事案を調査した上で処分が下される可能性もあるという。

 協会が厳しい姿勢でコロナに立ち向かってきたのは、勝武士さんの死と無関係ではないだろう。徹底した対策は確かに実を結び、今場所前に実施した全協会員のPCR検査では、第4波が襲来するなか「陽性者ゼロ」を達成している。

 東京都に出された3度目の緊急事態宣言の影響で、3日目まで無観客で行われた夏場所も、4日目からは観客の熱気と拍手が戻ってきた。これからウイルスの猛威が終息するまで、どれだけの時間がかかるか予想もつかない。感染拡大防止策を尽くしながら、少しでもコロナ以前の盛り上がりへと近づけていく――。それが勝武士さんに対して今できる、一番の弔いだろう。(松本龍三郎)