効果踏まえ、ワクチン接種の判断を 島根大の吉山教授

新型コロナウイルス

聞き手・長崎緑子
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 高齢者向けの新型コロナウイルスのワクチン接種が、山陰両県でも本格化し始めている。ワクチンの仕組みのほか、接種のメリットとリスクについて、吉山裕規・島根大学医学部微生物学分野教授に聞いた。

 政府が供給の契約を結んでいるワクチンには、米ファイザーと米モデルナ、英アストラゼネカ製がある。なじみのあるインフルエンザワクチンが、感染力を失わせたウイルス自体を使うのとは異なり、これらは新しい手法でつくられたワクチンだ。1997年ごろから開発が始まり、2005年には基本的な技術が確立されていた。

 いずれも新型コロナウイルスの表面にある、とげのような形をした「S(スパイク)たんぱく質」の異物としての情報を、ヒトの体に伝える仕組みは同じで、ファイザーとモデルナのワクチンはmRNA(メッセンジャーRNA)を用いる。筋肉注射で細胞内に取り込まれると、Sたんぱく質を作り出す。これはヒトにとっては「異物」になり、免疫細胞がこれに対抗する免疫をつくる。

 一方、アストラゼネカのワクチンは、無害な改変ウイルスを使って、新型コロナウイルス遺伝子をヒトの細胞へと運ぶ。細胞内に取り込まれた後、細胞核にまで到達し、核内でDNAからmRNAに転写され、さらにSたんぱく質になるため、工程が一つ加わるが、基本的にはmRNAと同じように防衛機能を働かせ、免疫が獲得されていく。

 ワクチン接種時の副反応として、アナフィラキシーショックが恐れられている。しかし、非常にまれな事象であり、起きるときは注射後約30分のうちに起こる。起きる仕組みもある程度分かっており、強心剤「エピネフリン」の注射という対処法があるので、医師にとっては正直なところ怖くない。注射した部分など肩の痛みや熱といった副反応も嫌われるが、解熱剤や痛み止めで対応できる。

 そもそも、軽い風邪のような症状が出るということは、免疫が活性化しはじめた証拠でもある。ポジティブに受け止めることもできる。ただ、ワクチンの種類によっては血栓症が起きるという話がある。動脈硬化の進んだ高齢者や血栓症の治療中の人はかかりつけ医などに相談した方がよいだろう。

 もちろん、新型コロナウイルスに限らず、ワクチンを打つかどうかの判断は個人のものだ。自分自身の経験で言えば、東南アジアに行くときは狂犬病ワクチンを打つし、アフリカへ行くときには黄熱病ワクチンを打つ。それぞれとても痛みを生じるワクチンではあるけれど、流行地で感染し発症するとほぼ確実に死んでしまうリスクがあるからだ。極端なことを言えば、新型コロナウイルスワクチンを打つかどうかは「感染して重症化するかもしれないのと、副反応で1日寝込むのとどちらがいいか」を選ぶようなものだと思う。

 変異株へはワクチンが効かないという心配もあるが、自分が調べた限り十分な効果を有しているようだ。市中感染レベルにある都市では緊急性が高く、早急にワクチン接種を進めた方がよいが、まだ感染拡大を抑え込めている山陰には時間的な余裕がある。ワクチン接種をする人は、ワクチンを求めてパニックになることなく、接種のスケジュールに従って順番まで待って欲しいと思う。(聞き手・長崎緑子)

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