連載「多様性と企業」
先を見通しにくい変革の時代に、人の多様性を軸に変わろうとする企業の動きを連載5回で探ります。
東京・丸の内。三菱ケミカルホールディングスの本社で4月1日朝、この日就任したジョンマーク・ギルソン社長(57)が初めて社員に語りかけた。
「地球をクリーンにするように企業は求められています」。質問に答える形のビデオメッセージで、「良い企業」として重視する条件を自ら切り出した。
「まず株主です。投資してよかった、と満足してもらう必要があります」
三菱ケミカルHDは売上高3兆円を超える国内化学最大手だが、株式の時価総額は1兆円台で推移し、同じ総合化学の独BASFの8兆円台に遠く及ばない。世界的な「脱炭素」のうねりで温室効果ガスを大量に排出する化学業界は逆風にさらされる。
「そろそろ次の人にまかせたい」。約6年間つとめた越智仁前社長(68)から取締役会の指名委員会に人選の打診があったのは、昨年3月ごろのことだ。
役員を決める指名委は小林喜光会長(74)と4人の社外取締役で構成される。次のトップ候補として、生え抜きの日本人を含む社内の3人、経営経験のある社外の外国人4人の計7人が最終選考に残った。
リサーチ会社に頼み、候補者…